弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2021年10月23日

清少納言を求めて、フィンランドから京都へ

ヨーロッパ・フィンランド


(霧山昴)
著者 ミア・カンキマキ 、 出版 草思社

面白いです。読みはじめたら、途中でやめられません。
1971年にフィンランドのヘルシンキに生まれた女性が日本語をまったく読み書きできないのに、清少納言を知りたいと思って京都にやってきたのです。すごい勇気です。
この本を読んで意外に思ったのは『枕草子』というタイトルから、セックスと官能的な木版画(春画)と誤解している外国人がいるという話です。日本人なら、『枕草子』は学校で古典として教えられているので、春画と結びつける人はいないと私が思うのですが、「枕の本」すなわちセックスの本だと誤解している人たちがいるそうです。驚きました。でも、著者は、そんな誤解からではなく、清少納言の世界が性的に開放的であったことを繰り返し紹介しています。上流貴族と、その周囲の女性たちは、なるほど性的にオープンな世界だったのでしょうね...。
清少納言のような自由な女性たちは性的に開放的だった。
セイ、あなたは、そこでトップを切って、みだらな生活をしていた。
うむむ、「みだらな」と「開放的」というのでは、かなりニュアンスが違いますよね...。
フィンランド人の著者は屋久島まで出かけて、温泉に入ったのですが、そこは混浴。バスタオルもなく、年寄りのオヤジたちの前で、自らの裸身をさらけ出してしまったようです。
日本人女性は、昔も今も、髪に対して、異常なほどこだわりをもっている。うむむ、なるほど、そうなんでしょうね。美容室が町の至るところにあって、どこも繁盛していますからね・・・。
紫式部は内気、穏やか、引っ込み思案、内向的、つき合い下手、女房たちの噂話やイジメに興味がなかった。セイ(清少納言)は、正反対に、自信家で、出しゃばりで積極的、軽快な言葉のやりとりがことのほか好きで、自分の知識を見せつけたり、感性と感情と怒りをはっきりあらわした。無理してでも出来事の中心にいた。
うひゃあ、そんなに、この二人は対照的だったんでしょうか...。
清少納言を「日本人娼婦」と訳している海外の本があるそうです。とんでもない間違いです。信じられません。これも本のタイトルから来る連想ゲームのような間違いなのでしょう。
フィンランド語で出版されたこの本は、フィンランドで大いに売れたそうです。「人生を変える勇気をくれた」という感想が寄せられたとのこと。なるほど、と思いました。やはり、人生、何かの転機を迎えることがあっていいわけです。
大いに気分転換になる本として、ご一読をおすすめします。
(2021年8月刊。税込2200円)

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