弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2021年8月14日

「セレモニー」

中国


(霧山昴)
著者 王 力雄 、 出版 藤原書店

店のレジでお金を支払うとき、必ず、「○○カードは持っていませんか?」とたずねられる。そして、多くの人は訊かれる前にカードかスマホを差し出している。私はスマホも○○カードも持っていない。
○○カードを使うと、70代の男性が、○○日の○○時(雨あるいは晴れ、湿度23度)に○○を○○で買ったということが永久に消えない記録として残る。それを1週間、1ヶ月そして1年間も分析の対象とすると、その人のいろんな傾向が判明する。何を好んでいるのか、何にお金を使うのか、どんなものを好んでいるのか、友人はいるのか、どんな人なのか...、ビッグデータも駆使して、すべてを究明し尽くす。そんなことにならないように、尾っぽをつかまれたくないので、スマホをもたず、○○カードも持たない私です。もちろんマイナンバーカードなんて申請する気はありません。
中国では、「維穏費」として1兆4千億元が国家予算の5.9%を占めている。国防予算のほうは、それより少ない1兆2千億元だった。維穏費とは、警察等をつかって社会の安定を維持する費用のこと。この維穏費は、2013年の7700億元に比べて、5年間に倍増した。
この本では、人々を個別に監視する方法として靴にネットのタグが取り付けられているという想定になっています。個人の行動がそれで識別され、実のところ性生活の微細な行動まで当局は手にとるように分かる仕掛けだというのです。
最近の国産の靴も外国産の靴にも、すべてにSID(セキュリティ識別子)が取り付けられている。すべての靴が、移動中通信ネットワークに紛れている高周波によって、認識と追跡が可能になっている。いやあ、たまりませんね。国家が個々の人々の生活行動のすべてを把握できるというのです。
いま日本政府が鳴物入りでマイナンバーカードを人々にもたせようと笛を必死に吹いていますが、そんなのに乗せられたら、丸裸同然です。私は嫌です。ご免こうむりたいです。
何も悪いことしていないんだったら、いいじゃないか...、とは思いません。政府とは、たとえば今のスガ政権です。まともな日本語の会話も国会で出来ないような首相の下で、私の私生活が握られているなんて気色悪すぎます。
著者はあとがきで、テクノロジーによる独裁が外部から崩壊させることが不可能なことを描いたと語っています。テクノロジー、インターネットの発達が必ずしも人々の個人としての生活を豊かにするものでは決してないことをほんの少しだけですが、実感した気分に浸りました。近未来の怖い話を予測する小説ではありますが...。
(2019年5月刊。税込3080円)

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