弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2021年7月24日

こう見えて元タカラジェンヌです

人間


(霧山昴)
著者 天真 みちる 、 出版 左右社

タカラヅカの経営術の秘密を暴いた本を先に紹介しましたが、この本は、タカラジェンヌとして活躍した女性による宝塚ライフです。
2006年に宝塚歌劇団に入り、花組では主として「おじさん」役を演じました。また、余興でタンバリン芸ができるそうです。格好いいですね。トップスターにこそなれませんでしたが、舞台で大活躍して、2018年10月に退団し、現在ではフリーとして活躍中とのこと。
抱腹絶倒間違いなし、とオビにありましたが、たしかに笑いながら一気に読みすすめました。ただし、「関わらず」(正しくは、関ではなく拘)とか、適切な編集者がすべきミスが散見されたのは残念でした(私も編集者のハシクレなのです...)。
舞台の上でセリフをド忘れしてしまったことがあるという「告白」には驚きましたが、やっぱりそんなことって、あるんですね...。私が舞台に出て役者を演じたくないのは、まさにそれを心配するからです。大勢の前でマイクをもって話す機会は多いのですが、そして一瞬、頭が真っ白になったことが何度もありましたが、あらかじめ決められたセリフを言うのではありませんので、そのとき頭のなかで天から降っておりてきた言葉を口に出して、しのぎました。ですから、今では話の流れのメモは一応つくりますが、メモを見ながら話すことは、まずありません。そして、時計を見ながら、あと何分というのを計算しながら話すだけの余裕があります。要するに、それだけ場慣れして、度胸がついたということです。35歳のとき、NHKの朝の「おはよう広場」で生放送に出たときは最高に緊張しました。それでも、なんとか乗り切ったことも一つの自信になりました。前日、渋谷のホテルに泊まって、朝早くNHKに行ったときは、足がガチガチ震えていましたが...。
著者は、宝塚音楽学校の受験に1回目は失敗。それでも25時間ぶっ通しで寝続けて失地回復。2回目で運よく合格。ここって、受験は4回できるんだそうです...。
この宝塚音楽学校では、1年に3回も試験がある。
「おはよう。今日もいい天気だね。朝ごはんは何がいい?」
これを正しいセリフで演じることをあきらめ、気持ちを優先に演じる。すると、なんと、50人のうちで3番という成績。ヤッター、やりましたね。
宝塚歌劇団に入る前に、各人は芸名を提出しなければならない。生徒はみな、家族や師匠とともに、丁寧に芸名を考える。著者は、天満バレエ教室の発表会をみに行き、「鉄腕アトム」の天馬博士を思い出して、「テンマみちる」を考えついた。みちるは本名。テンマは天真爛漫の天真。
夢見る受験生時代は、もちろんトップスターを目指していた。しかし、自分がほれぼれしていた格好良さを自分で表現するのはたやすいことではないことを自覚せざるをえなかった...。そして、著者に与えられたのは、「脇役のトップスター」。いやあ、すごいじゃないですか、これって...。
著者は、自分の人柄なんか知らない、初めて見た人を爆笑させることを課題にさせられ、それを心がけたといいます。そして、見事にやりきったのでした。
タカラジェンヌの苦労話を、これほど笑いながら読める本にしたのは、これまたタンバリン芸と同じ、これも芸ですね。読みはじめたら途中で止まらなくなって、バスの中で読了してしまいました。今後ますますの活躍を楽しみにしています。
(2021年5月刊。税込1870円)

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