弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2021年4月10日

花粉症と人類

人間


(霧山昴)
著者 小塩 海平 、 出版 岩波新書

10年ほど前から花粉症に悩まされています。まず、クシャミと鼻づまりです。夜、鼻が詰まっているため鼻で呼吸できず、口で息をしていると、ノドがやられます。クシャミと鼻水のため、ティッシュが欠かせません。ポケットティッシュなんて、1袋がすぐなくなってしまいます。そして、目です。痛痒(いたがゆ)いのです。目薬をさしたら、なんとかおさまってくれます。5年以上も前から、花粉症予防のためにはヨーグルト(BB536)がいいというので、毎朝のんでいますが、どれだけ効き目があるのか、自分でもよく分かりません。それでも続けています。信じるものは救われるの精神です。
ただ、コロナ禍で右往左往している今年は、それでも軽いのです。夜中に鼻づまりで苦しくなって目が覚めることがありません。これは助かります。朝までぐっすり眠れるのはいい感じです。とりあえず、ヨーグルトのおかげにして自分を慰めています。
スギ花粉は、大きさは直径30マイクロメートル(0.03ミリメートル)ほど。落下速度は、無風だったら1秒あたり2センチメートルほど。これは1メートル落下するのに1分近くかかることを意味している。ところが、その間に、少しでも風が吹けば、すぐに飛行物体と化してしまう。
昔の人たちは、今とちがって花粉について驚嘆と敬意をもって接していた。
花粉や胞子の外壁は、炭素数90の高分子であるスポロポレニンという化学的にとても強固な物質でできている。そのため、塩酸や水酸化ナトリウムなどの強酸や強アルカリで処理しても溶解しない。泥炭のなかに、古い時代の花粉や胞子を顕微鏡で見ることができるのは、そのため。
花粉症は1819年にイギリスで生まれた。そのころは「夏カタル」と呼ばれていた。
イングランドの牧草花粉症、アメリカのブタクサ花粉症、そして日本のスギ花粉症が、現代世界の花粉症。
ブタクサは、1個体から3万2000もの精子をつけているところが目撃されたことがある。
日本の花粉症患者の発見は、1961年にブタクサ花粉症、1964年にスギ花粉症だった。そして、1980年代後半に患者が爆発的に増加した。
日本では、英米とは異なり、エリート階級のみが花粉症になる現象は起きていない。
1987年、ニホンザルまで花粉症を患うことが確認された。
日本全国にスギ林は450万ヘクタール、つまり九州の面積ほど存在する。林業に従事する人は、1980年に15万人いて、2015年には、その3分の1以下に4万5千人しかいない。
スギ花粉症は、日本という国が、私たち庶民やその周囲の環境を置き去りにして経済成長を追い求めてきたことへの警告ではないか、著者は、そのように指摘してます。なーるほど、ですね...。
花粉症に悩む人々への慰めや励ましを与えることができたら...、と著者は強調しています。これまた同感ですが、やっぱり早くなんとかしてほしいです。
(2021年2月刊。税込880円)

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