弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2021年4月 5日

舞台上の青春

人間


(霧山昴)
著者 相田 冬二 、 出版 辰巳出版

高校演劇の世界を紹介した面白い本です。
北海道の富良野高校から四国の徳島市立高校まで、6校の舞台が紹介されています。
福岡にも八女市の西日本短大付属高校に演劇部があります。本があり、このコーナーでも紹介しました。残念ながら私はみていませんが映画にまでなっています。
北海道の富良野には倉本聰の率いる「富良野塾」があり、公設民営の劇場「富良野演劇工場」もあります。市民劇団「へそ家族」があって、「ふらの演劇祭」まであるそうです。
この富良野高校には実は演劇部はなく、演劇同好会ができたばかり。それなのに全国大会に出場し、見事に最優秀賞に選ばれたというのです。実にすばらしいことです。
演劇大会は上演時間が60分以内と決まっている。主役は高校生。高校生が高校生役をする。おじいちゃんやおばあちゃん役ならプロに負ける。でも、高校生が高校生の役をやるのだから、負けない。高校演劇というたった2年間しか使えない時間の中で、高校生が高校生を演じる。すばらしいですね。
富良野高校の劇のタイトルは「へその町から」。女子高校生3人が、さびれたホームで汽車を待っている。この3人のディスカッションだが、後ろのほうで、別の3人が劇中劇を演じる。誇りをもてる環境にあるのに誇りをもちづらいシチュエーション。親と分かりあいたいのに、親と分かりあえない劇中劇。「高校生の現在」がダイレクトに伝わってくる...。
いやあ、こんな紹介をされたら、ぜひ本物の舞台をみてみたいものです。
高専ロボコンに、このところはまっていますが、高校生演劇もなんだか面白そうですね...。
上演時間1時間について、濃厚、いや特濃。練乳のような濃さがあると著者は評価しています。役者を演じる高校生の言葉がいいですよ...。
感情が、喜怒哀楽がちゃんとあるから、面白いところでは面白いって笑って、怒るところは怒る。頭の中でも感情をつくるので、ちゃんと集中してやらないとできない。ひとつひとつの行動に対して、ちゃんと考えて、セリフを言う。
演劇やってると、周りの目が恥ずかしいとか、そういうことを思わなくなっちゃう。いい意味で、自分もバカになれる。
指導する教師の話もまたすばらしいです。
胃が口から出るくらい緊張して、人前に立っても、良い芝居をすれば終演後に、ちゃんと拍手がもらえる。それが素晴らしいし、このことでずいぶん、高校生は救われているんじゃないかと思う。
演劇は、役に立つ。すぐに役に立つ。もう、ありえないくらい、高校生が別人になる。演劇を体験することで、目の前の若者が、めきめきとうまくなり、変化していく。
コロナ禍のなか、集まっての全国大会が中止となり、代わってオンラインの大会になった。ところが、無観客なのに舞台で演劇できないという会場も出ているそうです。でもでも、ぜひ演劇部は続けていってほしい、存続してほしいと思いました。
弁護士も、とりわけ裁判員裁判では役者を演じるように裁判員の市民に語りかけることが大切だと強調されていますので、決して他人事(ひとごと)ではありません。
(2020年11月刊。税込1760円)

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