弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2021年2月21日

「パチンコ」(上)

韓国


(霧山昴)
著者 ミン・ジン・リー 、 出版 文芸春秋

アメリカで100万部突破した本だということです。オバマ元大統領も読んで推薦したという話題の本です。
いやあ、なるほどなるほど、前評判どおりの重厚なストーリー展開です。四世代にわたる在日コリアン一家の苦闘を描いていますが、上巻ですから、まだその半ばです。
舞台は、韓国の港町・釜山(プサン)のすぐ近くの影島(ヨンド)の漁村に始まります。
ときは、日本が大韓帝国を併合して植民地として支配していたころのこと。
主人公のソンジャは、働き者の父を早くに亡くし、母とともに下宿屋を営んでいる。そこに独身の若い牧師がやってきた。日本の大阪へ旅する途中に病弱の身を休ませようというのだ。やがてソンジャは年上の男性に気に入られ、妊娠する。ところが、そのときになって初めて男性は日本に妻子がいると告白した。韓国社会では、父なし子を産むことへの偏見、制裁は強い。ソンジャは男性に裏切られたと絶望する。それを承知で牧師が結婚を申し出る。そして、二人は無事に日本へたどり着き、大阪に腰を落ち着ける。
戦前の日本と朝鮮の社会状況が活写されていて、その置かれた状況に抵抗なく入っていける展開です。
戦前の日本はついに無謀な戦争に失敗し、敗戦を迎える。ソンジャは2人の子をかかえて、さあどうする...。下巻が待ち遠しくてなりません。
(2020年12月刊。2400円+税)

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