弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2021年1月 9日

戦国の図書館

日本史(戦国)


(霧山昴)
著者 新藤 透 、 出版 東京堂出版

日本人は「戦国時代」が大好き。この本に、こう書かれていますが、まったくそのとおりです。映画「七人の侍」も戦国時代の話ですよね。織田信長とか豊臣秀吉、たくさんの武将たちが次々に登場してきますので、大いにロマンがかきたてられます。
ところで、「戦国時代」という言葉が一般に普及したのは明治に入ってからで、「戦国大名」という用語が誕生したのは戦後だというのに驚いてしまいました。江戸時代には「戦国」という言葉は使われておらず、一般的な言い方ではなかった。むひゃあ、そ、そうだったのですか...、恐れ入りました。
足利義政・義尚は、書籍収集をしていて、足利将軍家は蔵書家でもあった。
この本は足利(あしかが)学校について詳しく紹介しています。
足利学校は、室町時代の中期に、関東管領の上杉憲実によって再興された。鎌倉・円覚寺の禅僧が校長となり、生徒には琉球出身の学生もいた。すごいですね。沖縄から、はるばる本土、それも足利まで、噂を聞いてやってきたのでしょうか...。
足利学校では儒学を中心として『易経』に力を入れていた。当時、易学と兵法を学んだ足利学校の卒業生は戦国大名にひっぱりだこだった。易学は、戦国時代の「実学」だった。
足利学校は、自学・自習が中心で、修学年限も決められていなかった。まさしく大学ですね。なので、単なる図書館ではなかったということです。
このころの連歌師は、プロの間者(かんじゃ)ではなかったとしても、それに近いことをしていた。ふむふむ、なるほどですね...。全国を渡り歩いていて、各地の情報をつかんでいたことからのことです。
もともと寺院は僧侶のための教育機関だったが、武士の子弟も受け入れるようになり、室町時代に入ると、民衆の子どもたちの一部も「入学」が許可された。「大学」の受け入れ枠が広がっていったのでした。
戦国時代は、世の中が乱れた時代だったが、それまで京都で独占していた文化が一挙に地方に波及し、そこで独自に進化した画期的な時代だった。
というわけで、戦国時代の実情の一端を知ることのできる本です。
(2020年9月刊。2500円+税)

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