弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2021年1月 6日

レオナルド・ダ・ヴィンチ

イタリア


(霧山昴)
著者 池上 英洋 、 出版 ちくまプリマ―新書

中世イタリアの生んだ天才画家、レオナルド・ダ・ヴィンチの現存している絵画はわずか15点ほど。そして、その3分の1は未完成のまま。かの有名な「モナ・リザ」(ラ・ジョコンダ)も未完成作とのこと。これには驚きました。
「モナ・リザ」は、私もパリのルーブル美術館でみることができました。意外に小さな絵でした。幸いにも、それほど見物客がいなかったので、すぐそばで、じっくり鑑賞することができました。もう20年も前のことです。
イタリアは、なんと今も昔も文書の国で、人口の調査書や税の申告書類、裁判記録から教会の洗礼者名簿にいたるまで、大量の書類が作成されていて、律儀に保管されている。ええっ、日本と似ているのですね。江戸時代の庄屋文書が今に伝わっているのと同じことでしょうね...。
父親の名前は、セル・ピエロ。セルとは公証人をしていたことを意味する。母親は恐らく小作農の娘で、二人のあいだの階級差のため、正式な結婚はしていない。
「ダ・ヴィンチ」というのは、「ヴィンチ村の出身」という意味。
レオナルド・ダ・ヴィンチには、1人の実母と4人の継母、そして16人もの異弟妹がいた。レオナルドのような婚外子は、出世するのに大きなハンデを背負わされた。
レオナルドは、ラテン語を習わず、左利きなので、右利き用のアルファベットを左右反転させて書いた。これが有名な「鏡文字」だ。
レオナルドには「未完成癖」があったとしています。遅筆のうえにきちんと完成させなかったというのです。これって、当時の画家にとって致命的なことですよね。それでも、これだけ有名になるのですから、さすが天才です。
レオナルドの時代には、まだトマトは食べられていなかったし、コーヒーや紅茶もなかった。それでは、いったい、何を飲んでいたのでしょうか。まさか、ワインではないでしょうね...。
レオナルドは生涯、独身で過ごした。同性愛者には間違いない。
レオナルドには親友と呼べる存在が見あたらない。
「モナ・リザ」のモデルが、その夫からの注文絵画だとしたら、妻が指輪をしていないはずがない。
レオナルドは、若きフランス王フランソワ一世の招きでフランスに行き、67歳で亡くなります。私もレオナルドの墓のあるアンボワーズ城に行ったことがあります。まだ50代のときでしたから、ロアール河ぞいのシャトーを歴訪したのです。
たまには、こんな天才の絵をしっかり眺めてみるのもいいものですよね...。
(2020年5月刊。980円+税)

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