弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2021年1月 2日

最後の湯田マタギ

人間


(霧山昴)
著者 黒田 勝雄 、 出版 藤原書店

マタギの世界をうつしとった貴重な写真集です。
ときは1977年から1997年までの21年間。場所は岩手県和賀郡湯田町(現・西和賀町)。ここは、東北地方でも有数の豪雪地帯。かの有名な沢内村に隣接し、またカマクラで有名な秋田県の横手市は20数キロ先。
この湯田町の長松地区にはマタギと呼ばれる人々が暮らしていた。
マタギの頭領は「オシカリ」と呼ばれ、長松地区では世襲の地位だった。
熊獲りには10人ほどの隊を組んで出かける。獲った熊の肉は均等に分けられ、くじ引きによって全員に分配される。丁寧に乾燥され、成形された高価な胆のうもグラム単位で平等に分けられる。
著者は熊獲りに同行を許され、3年目にしてようやく熊獲りの現場に立ち会って写真をとることができました。
猟場に向かい、猟場を遠望し、待人とトランシーバーで連絡をとりあい、村の中で獲物の熊が来るのを待つ射手。いずれも1989年から1991年にとられた写真です。みんな若くて元気です。
今ではマタギの世界もなくなり、猟をする人はいても10人で隊を組んで出かけるということはないようです。
白黒ですが、くっきり鮮明な写真集です。人々の生活が躍動感あふれる写真集になっているのに心が震えました。
歌手の横井久美子の名前が出てきたり、オビの推薦文はなんと瀬戸内寂聴というのにも驚かされます。あなたも、ぜひ図書館で手にとって眺めてください。
(2020年6月刊。2800円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー