弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2020年9月 7日

虫とゴリラ

昆虫・ゴリラ


(霧山昴)
著者 養老 孟司、山極 寿一 、 出版 毎日新聞出版

二大巨人の対談ですから、面白くないはずがありません。
ゴリラは小さな虫を遊ぶことができる。手にダンゴムシをのせて遊ぶ。ココというメスのゴリラは、すごく猫好きで、何匹も猫を飼っていた。ええっ、本当ですか、どうやって...???
東北地方のサルは、江戸時代にマタギによって根絶やしにされた。サルを狩猟していない西南日本一帯では、サルは「神様の使い」だった。
アメリカザリガニは本当にたちが悪い。西日本新聞(2020.8.27)に中国・武漢では、ビールのつまみとして、日本から入ってきたアメリカザリガニが大いに食べられているとのことです。びっくりしました。戦後、日本でも食べていましたが、主としてニワトリのエサでした。私も小学生のころはザリガニ釣りに夢中でした。
いまの日本ではサル以上に恐ろしいのはシカとイノシシ。どれだけ捕まえても、どんどん増えている。
インドネシアの島に7種類のサルがいる。ペニスの形が違うので、交雑種はできない。また、お尻の形が違うと、発情すらしない。
サルやチンパンジーは、年中、毛繕いをしている。それで親しく共存できる。ヒトは体毛がないので、毛繕い以外の何らかのコミュニケーションを考えなくてはいけなくなった。
ゴリラが昼寝するときには、夜のようにベッドをつくらず、お互いに腹をくっつけあってつながって寝ている。
ヒトの祖先は草原(サバンナ)へ進出していった。ゴリラはもっとも保守的で、未知の場所へは出て行かず、むしろ熱帯雨林のど真ん中で暮らし続けることにした。なので、非常に食性を広くもつことにした。
チンパンジーもゴリラも、食物の分配はする。だけど、運ぶことはしない。ヒトだけが、仲間のいる安全な場所へ食物を運んだ。
言葉は聴覚と視覚を利用する。言葉は意味を伝えるもの。
オランウータンは7年も母乳を吸うし、チンパンジーは5年、ゴリラも4年。ところがヒトだけが1年か2年で、乳歯のまま離乳する。
子どもは保育園児までは、虫の好き嫌いが一切ない。小学校にあがると急に虫の好き嫌いが出てくる。子ども時代に自然に接していないと、実は自然に親しめなくなる。
私もザリガニ釣りのためにカエル(ビキタンと呼んでいました)を手にもって地面に叩きつけて殺し、両足をひき裂いて、糸にぶらさげてエサにしていました。カエルの足はザリガニ釣りのエサとしては最高なんです。そして、ストローでカエルの尻に空気を吹き込み、パンパンにふくれあがらせて、池に放りこんで、うれしがっていました。子どもは残酷なことが平気ですし、好きなんです。
子どもは、そうやって虫の世界、動物の世界に入っているし、いける。
人間のもっている大きな力は想像力。想像力が人間の世界を拡張するのに役立った。
いまの日本社会は、「感じない人」を大量生産している。受動的な人間ができてしまう。
常識を破るところに人間の面白さがある。AIは常識を破ることはできない。
日本の大企業の内部留保は460兆円。これは、にほんの国家予算の規模。これが有効に活用されていない。
人間同士のつながりは人間だけではなしえない。そのつながりには、常に自然が介在してきたことを忘れてはいけない。
はっとさせられる指摘が多く、日頃のあまりに「常識」的な発想を反省させられました。
(2020年7月刊。1500円+税)

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