弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年6月14日

警察庁長官狙撃事件

社会


(霧山昴)
著者 清田 浩司、岡部 統行 、 出版  平凡社新書

1995年(平成7年)3月には、オウムによる地下鉄サリン事件が起き、その10日後の3月30日に国松警察庁長官狙撃事件が起きた。
地下鉄サリン事件のほうは犯人であるオウムの信者たちは死刑となり、13人はすでに処刑されているのに対して、警察庁長官狙撃事件は犯人が逮捕されないまま、「迷宮入り」してしまった。
この本は、その犯人は中村泰という人間だと名指し、本人も自分が犯人だと言っているということを明らかにしています。つまり、犯人はオウムではないのです。
中村真犯人説がなぜ成り立つのかを検証していったのがこの本です。
国松長官は20メートル離れたところから4発うたれています。しかも、その銃は特殊なものでした。
この狙撃には三つの謎がある。特殊な弾丸。特殊な拳銃。高度な射撃技術。
真犯人の中村泰(ひろし)は1930年4月生まれ、事件当時65歳。旧制水戸高校から東大に入り、2年生のとき中退。警察官を射殺し、また、大阪と名古屋で銀行を襲撃し、現在は岐阜刑務所に無期懲役で服役中。
拳銃のコルト・パイソンは、車でいうとキャデラック、時計でいうとロレックス。高価で、希少価値がある。とても精巧につくられていて、正確に標的を撃ち抜くことができる。
ナイクラッド弾は、訓練用の銃弾。弾頭をナイロンでコーティングしている。
中村は銃の持ち方から身のこなしまで、完全に銃のプロ。警察学校の教官よりうまい射撃技術を身につけていた。
では、中村の犯行動機は何か。それは、犯人がオウムだと思わせて、警察がオウムつぶしに動くことを期待していたということ。ええっ、そ、そんなことが動機になるものでしょうか・・・。
この本には真犯人と名指しされた人物の顔写真までありますので、よほど自信があるようです。ぜひ、司法の手で真相を解明してほしいものです。
(2019年2月刊。860円+税)

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