弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年6月15日

70歳のたしなみ

人間

(霧山昴)
著者 坂東 眞理子 、 出版  小学館

昨年12月、私も70歳となりました。先日は、右肩が突然動かなくなり、4日間、泣きました。朝、目覚まし時計を停められない、布団から起き上がれない、着換えができない、歯みがきできない・・・。右肩が動かなくて、本当に不便しました。幸い、手は動かせましたから、ペンをもって字は書けましたので、仕事への支障はそれほどありませんでした。整形外科に行ってレントゲン写真をとると、右肩に石灰化が始まっているのが確認できましたので、恐らくこれが急に暴れたのでしょう、という判定でした。要するに、70歳という老化現象をひしひしと体感させられたということです。
70代というのは人生の黄金時代、新しいゴールデンエイジだというのが著者の訴えるところです。著者は私と同じ団塊世代です(2歳だけ年長)。
70歳になったら、毎日、上機嫌で過ごすことが周囲に対するマナーであり、礼儀であり、たしなみである。イライラしていても、意思の力で上機嫌に振る舞うこと。
機嫌よく過ごす秘訣は、意識して他人(ひと)の良いところ、可愛いところを見つけ、「をかし」と楽しみ、「いいな」と感心すること。
70歳になったら、良い加減に生きる知恵が大切だ。周囲の人が成功しているのを見たら、たとえ心の底からでなくても、必ず言葉で祝福し、ほめてあげる。これを習慣にするのが大切だ。
70歳になったら、「キョウヨウ」と「キョウイク」をつくる。「キョウヨウ」とは、今日は用事があること。「キョウイク」とは、今日は行くところがあること。何も用がない、どこにも行くところがないと言って、家でゴロゴロしていると、すぐにボケてくる。そして、用事も行くところも、自分で能動的に発見し、取り組む。
70歳になったら、お金をいかに貯めるかではなく、もっているお金をいかに上手に使って豊かに暮らす心がけこそ必要だし、大切だ。
70歳でするべきは終活ではない。生前葬はあまり早くするものではない。高齢期という新しいステージを生きるため準備の老活をすべきだ。
与えられる毎日毎日を丁寧に生きる。自分を励まして、少し無理して生きる。これが高齢期を豊かにするライフスタイルだ。
友人だからこそ、言ってはいけないことが、たくさんある。年齢(とし)をとったからこそ、相手の気持ちを想像して、どう表現したら相手の気持ちを傷つけないで言うべきことを伝えるのか、これを工夫する。それがたしなみだ。そんな工夫ができなくなったら、たちまち老化は加速する。
人間関係はこわれもの。大切に扱わないと、すぐにこわれる。
夫婦仲良く暮らすためには、上機嫌に振る舞い、できるだけずけずけ言わないように心がける。
他人の過去も自分の過去にもこだわらないのが70歳に必要なたしなみ。気にすべきは過去ではなく、これからの日々での有言実行、約束を守ること。
わずか200頁ほどの新書版です。病院での待ち時間で読了しました。さあ、私も、こんなたしなみを有言実行して、一日一日を楽しく上機嫌で生きていくことにしましょう。
(2019年5月刊。1100円+税)

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