弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年2月18日

それでも企業不祥事が起こる理由

社会


(霧山昴)
著者  國廣 正 、 出版  日本経済新聞出版社

 コンプライアンスと聞くと、なんだか法令を形ばかり守っていればいいんだろうというマイナスのイメージがありますよね。著者は、その体験を通して、そんなものではないと力説しています。
 重箱の隅をつつく形式的な法令遵守(じゅんしゅ)の強制が、コンプライアンスの名のもとで横行している。コンプライアンスという言葉は誤解されている。コンプライアンスは単なる法令遵守ではない。危機的状況にある企業は、弁護士の法律的意見にしがみついてはいけない。
 パロマの教訓は、人が死亡するという重大事故が続発しているという重大リスク情報をもつ企業は、それを公表して次の事故を防ぐべきだというのが今日の日本社会における企業に対する社会的要請なのである。
企業の管理とは、裁判所を相手にするものではなく、消費者やマスコミなどの社会を相手にするものである。日本社会はルール重視の社会に変わっている。ところが、企業がそれに対応できずに、従来と同じ行動を続けていることが、多くに企業不祥事を生み出している。
 公正取引委員会に談合やカルテルがあったことを通報したら、申告1番目の企業については課徴金が全額免除されるという法律が既に10年前(2006年1月)に施行されているのですね。ちっとも知りませんでした。
 コンプライアンスを「法令違反に問われないこと」と考える企業は、「法令に触れない限り、少しばかり行儀が悪くてもかまわない。ビジネスチャンスはそこにある」という経営姿勢をとりがちだ。これは、合法的に法の網をかいくぐって利益をあげる手法。しかし、いつかは必ず失敗し、取り返しのつかない制裁を受けることになる。
 ダスキンは、「積極的には公表しない」というあいまいで成り行きまかせの方針でのぞんだ。この姿勢が危機を拡大させた。危機管理広報で大切なことは、報道されないことではなく、報道を1回で終わらせ、連続報道を防ぐこと。報道されないことを追及するあまり発覚したときに、いかに対応するかがおろそかになってはいけない。
 第三者委員会に入って苦労した体験を踏まえていますので、新人ではない私も大変勉強になりました。ありがとうございます。
(2010年7月刊。1600円+税)

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