弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2016年2月17日

会社という病

社会

(霧山昴)
著者 江上 剛 、 出版  講談社α新書

 会社がらみの不正が頻発している。なぜか・・・?
 社員が疲れきっているからだ。会社でストレスがないのは経営者だけ。社員は、誰もが「助けてくれ!」と悲鳴をあげている。多くの会社は、一見、社員を大事にするホワイト企業の顔色をしているが、その内実は「死ぬまで働け」というブラック企業になってしまっている。かつての日本企業は社員を大切にすると言っていたし、外国からそうしていると信じられていた。今では、非正規社員が雇用者の4割近くになったし、社員の多くが将来に不安を抱きながら働いている。
 東大卒は、大企業での出世に強い。それは「潜在能力が高い」からだという。
 うひゃあ、なんということでしょう。「潜在能力」だなんて、誰にも分らない「能力」ですよね・・・。
 長くサラリーマン人生を送ってきたものとして、学生に出来るアドバイスは、ただ一つ。出世なんかするな。出世欲にとりつかれ、そのためだけに他のすべてを犠牲にし、本来の自分の人生を失うことが非常に多い。ある程度の年齢になったら、出世欲は抑えたほうがいい。
派閥会社を生き抜く第一の鉄則は、絶対に浮気をしないこと。あっちふらふら、こっちふらふらというのは最悪だ。そして第二は、派閥に入った以上は、お茶くみ、雑巾がけをいとわないこと。
部下は育てるものではない。育つものである。
嫌な上司とつきあうには、ストレスをためこまず、上手に付き合っていく方法を考える。
会社の業績は、勉強のできる人材だけでは絶対に伸ばせない。バラエティに富んだ人材がいなければ、イノベーションは起きないし、馬力ある営業活動もできない。
サラリーマンにとって、定年とは、なかなか辞めどきを自分で判断できない愚かな組織人にとって、辞めどきを教えてくれる重宝なシステムだ。
社長経験者が相談役だの顧問だのといって会社に残ってプラスになることは一切ない。定年をもっとも必要とするのは、社長や相談役という経営トップなのだ。
日本の会社の成果主義というのは、ひとにぎりの老獪な経営者グループが、欧米なみの超高額の報酬を受けとり、少ない残飯を社員に配っているようなもの。会社の成果の大部分を経営者層がとってしまう欧米のシステムは日本には合わない。巨額の報酬をもらって居座るというのでは、社員のモラル(士気)は低下するばかりだ。
 銀行員として長くつとめた著者が、会社の病(やまい)を切れ味も良くバッサリ切り捨てています。会社づとめの経験がない私は、資格をとって良かったなと思うばかりです。


                           (2016年2月刊。880円+税)

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