弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年12月 1日

「大国」への執念、安倍政権と日本の危機

社会

(霧山昴)
著者 渡辺治・岡田知弘ほか 、 出版  大月書店

  アベ政権は本当に怖いと私は考えています。ところが、一般的な支持率が4割もあるというのです。不思議でなりません。安保法制とかTPPや、労働法規制などでは、圧倒的に不評なのですが・・・。
  安倍政権は、戦後の歴代政権のなかで特異な性格を有する政権である。その特異性とは、安倍政権が一方では保守支配層が長年にわたり実現を待望しながらできなかった課題を強行する支配層待望の政権であると同時に、保守支配層が望まないことまでやってのけるという、きわめて扱いにくい政権だという二面性があるから。
  安倍政権は、発足以来、つねにマスメディアに話題を提供し続けている。
  欧米のメディアが注目しているのは、アベ政権のタカ派的言動への警戒と懸念である。
  もう一つは、アベノミクスへの関心である。
  なんとも厄介な政権だということは、一方で、アベでなければ出来ないことをやってくれるが、他方、その制止を振り切って歴史修正主義にこだわるから。
  二つの顔は、当のアベにとっては何ら矛盾していない。それどころか、どちらの顔もアベにとって、なくてはならない顔なのである。
  アベ首相の目指す「大国化」は軍事大国になることを意味する。そのためには、自衛隊の海外派兵の自由は不可欠の土台である。
  アベ政権は、日本の大国化を、あくまで対米従属、つまり日本同盟の枠内で、日米同盟を強化する方向でしか展望していない。アベ首相の言う「強い国家」とは、第日本帝国以外にない。
アメリカのオバマ政権も日本の財界も決断した。こんなアベでなければ、長年の課題達成は無理だ。アベの見るからに危険な顔を前面に出さないようにコントロールしながら、アメリカ政府はアベ政権をいつものように、なんとかの一つ覚えのように全面的に支えてきた。
  アベ政権は、官邸主導の集権的意思決定の体制をつくりあげている。
  自民党は弱体化し、新自由主義の抵抗体とはならなくなった。
  自民党って、かつての民主党と同じほど、古臭くて、非民主的な政党ですよね。
  アベ首相は、全世界を専用機で飛び回っています。しかし、残念なことに、そのとき憲法9条の素晴らしさ、教訓がまったく生かされていません。
「政治主導」を標榜し、官僚機構に敵対した民主党政権のもとで、むしろ、政権の依存度は高まった。
  アベ内閣の閣僚のほとんどが日本会議の国会議員である。
  アベ政権内でハト派の政策と政治的影響力が低下している最大の原因は、グローバル競争国家に対抗する独自の国家構想がないからだ。
  先の9月国会で「成立」した安保法制法については、古賀誠、与謝野馨、加藤紘一、山崎拓など自民党の元有力議員が名前を出して否定ないし消極だった。
                  (2014年10月刊。2400円+税)

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