弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年12月 2日

下流老人

社会

(霧山昴)
著者  藤田孝典 、 出版  朝日新書

  いま、日本に下流老人が大量に生まれている。下流老人の存在が日本社会に与えるインパクトは計り知れない。
  下流老人とは、生活保護基準相当でクラス高齢者とその恐れがある高齢者のこと。
  下流老人には、次の3つがない。
  第1に、収入が著しく少ない。
  第2に、十分な貯蓄がない。
  第3に、頼れる人間がいない。困ったときに頼れる人間がいない。
65歳以上の一人暮らしが増えている。1980年には、男性19万人、女性69万人だった。2010年には、男性139万人、女性341万人。
  下流老人は、あらゆるセーフティネットを失った状態。
  下流老人には、日本人の誰もがなりうる。つまり、私たちの問題なのである。
  団塊世代より上の層の老人には、日常生活力が驚くほど乏しい。仕事一筋できた男性は老後に離婚しないこと、されないことが必要。
  これからの日本社会には、もはや中流は存在しない。いるのは、ごく一握りの富裕層と大多数の貧困層だ。
  自己責任論、努力不足論が、明日のあなたを殺す。
  下流老人になったのは怠けていたからだ、自己責任だと現役の正規労働者の多くが考えている。しかし、現実はそうではない。
  自民党の片山さつき議員は、生活保護を受けるのを恥ずかしいと思えと言わんばかりのことを言っている。しかし、社会保障制度を利用するのは憲法上の権利であって、何も恥ずかしいことではない。国会議員のインチキパーティーなどで金もうけしているほうがよほど恥ずかしいことではないでしょうか・・・。
  生活に困ったら、困る前に、変なプライドなんか捨てて、公的援助制度を利用すること。
  私も本当に、そう思います。軍事予算が5兆円をこすというのは、福祉や教育予算を切り捨てたうえでのことです。とんでもないアベ政治は許せません。

(2015年10月刊。760円+税)

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