弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年3月 4日

「在日特権」の虚構

社会


著者  野間 易通 、 出版  河出書房新社

 「ウソも十分に繰り返せば、人は信じる」
 これはナチス・ドイツの宣伝相ゲッベルスの言葉。
たしかにデマ宣伝も繰り返していると、なんとなくもっともらしくなり、特定集団に負のイメージを定着させ、それを前提として物事がすすんでいくことになります。ですから、「在日特権」なるものの嘘は、徹底的に、しかも何度となく繰り返し暴いてしまうことが大切です。なんとなく人々の身体に嘘が染みついてしまわないようにする必要があります。
 憎悪を煽動する側は、その憎悪煽動そのものが目的であり、ときには楽しい趣味ですらあったりする。
「在特会」(在日特権を許さない市民の会)が問題としている「在日特権」とは、①特別永住資格、②朝鮮学校への補助金の交付、③生活保護の優遇、④通名制度、の四つ。
 宝島社と別冊宝島が、「在日特権」というコトバの流布に加担した責任は大きい。売らんかなで本をつくり、「在日特権」デマを利用して在日コリアン一般に対する憎悪を煽った主体である。うむむ、許せませんね、これって・・・。
 特別永住資格は、日本人より有利な権利をもつという意味ではない。日本人とほぼ変わらぬというだけのこと。
 終戦の時点で、在日朝鮮人や台湾人は日本国籍を有していた。なぜなら、朝鮮も台湾も「帝国日本」が領土として支配していたのだから。終戦によって、その資格や法的地位を他の外国人と同じに扱うことができるはずもない。このような歴史的経緯が立法に反映されるのも当然のこと。
 また、「在日」であっても犯罪をおかせば国外撤去になるし、その実例もあるのに、「在特会」は、「在日」は絶対に国外退去にならないなどという嘘を言いたてている。
 年金については、日本が国民年金に在日外国人を加えるようになったのは、1981年に難民条約を批准したことによる。1982年、国民年金から国籍条項が撤廃され、外国人も加入できるようになった。国民年金への加入が認められるまで、「在日」の多くは無年金で放置されていた。
 仮名口座の開設が違法になったのは、2003年に施行された口座の開設を禁じる本人確認法による。
 生活保護受給者のなかで外国人の占める割合は3%でしかない。そのうち「在日」は2%でしかない。
在日に「特権」があるかのように思い込んでいる人が残念ながら少ないようです。私たちは、きちんと事実を知り、デマを見抜く力を養わなければいけません。
 それにしても、「在特会」って、いじましい団体ですね。他人を蹴り落として何が楽しいのでしょうか・・・。本人たちが、きっと、現実の日本社会で大いなる疎外感を味わっているのでしょうね。そして、その本当の加害者を見抜くことなく、同じ「被害者」たる弱者同士でたたきあっているのです。本当に残念な状況です。
(2013年11月刊。1600円+税)

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