弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年3月 3日

ロング・グッバイのあとで

社会

著者  瞳 みのる 、 出版  集英社

 ザ・タイガースは、私の青春時代と深く結びついています。
 4年間、ステージに立ってスポットライトを浴びていた著者が40年刊の沈黙を破って語った本です。読みながら、私の来し方も振り返ることのできた本でした。
 たくさん心に残ることが書かれていましたが、なんといっても、次のフレーズが最高です。
 自分たちの老化をあらゆる面で認めざるをえない年齢になって、なるほど僕らは団塊の世代なんだと思うようになった。
 同世代から元気をもらおう。そして、同世代に人に元気を返そう。そんな元気が僕らのなかにぐるぐると回り、それが上下の世代の刺激になって、もっと活気、元気、楽しみ、喜びにあふれた社会になれば、こんなに素晴らしいことはない。
 「団塊の世代と共に生きていくことが大事だよ。僕は団塊の世代から離れないよ」
 これはザ・フォーク・クルセイダーズの北山修の言葉です。本当に、そのとおりだと思います。
 私が大学生時代の学園闘争(東大闘争)の1年間を「小説」として再現した(『清冽の炎』1~7巻。花伝社)のも、そのつもりでした。とても残念なことに、ほとんど反響がなく、売れませんでした。でも、後悔はしていません。あの1968年当時の熱気をいつかは追体験してみたいと思う若者があらわれる。そのときには、私の本が必ず役に立つと確信しています。
著者は、ザ・タイガースの一員として脚光を浴びながら、さめた思いをしていたようです。だからこそ、きっぱり芸能界から足を洗ったわけです。
 僕はドラム演奏をしながら、青春の貴重な時間を売っているだけなのだと思うようになっていた。いつまでもアイドル路線を強いられ、いい年齢(とし)をして、いつまでも可愛い子路線の歌ばかりうたわされる。バラエティー番組にだされて、ふざけさせられる。だけど、やせても枯れてもミュージシャンなのだというほこりがあった。ベトナム戦争や時代や社会の流れに無関心ではいられなかった。
 著者は定時制高校生のとき、民青(日本共産党の青年組織のようなもの)に加入しています。ですから、社会に関心があったのも当然です。
 ザ・タイガースを解散し、芸能界を去る直前、1971年1月24日、有楽町のちゃんこ料理店で送別の宴が開かれ、著者も参加しています。私は、司法試験受験勉強の真最中です。当時の日記が残っていますが、1日中、私は勉強していました。
そして、著者は有楽町から京都へトラックで京都に戻っていたのです。1年間で貯めたお金1000万円を軍事資金として、大学受験勉強に打ち込むのでした。著者は見事に慶応大学に合格しています。えらいですね。
 当時の1000万円は、まさに大金です。私は、月3万円ほどで寮生活を過ごしていました。
 著者は、ザ・タイガース時代にフランス人の彼女がいたとのこと。フランス語が少し話せる私としては、かなわぬ夢を先に実現した著者を少しうらやましく思いました。
 とても赤裸々に自分を語っていて、ますます著者が好きになりました。本当に、いい本でした。ありがとうございます。
(2011年8月刊。1200円+税)
 きのうの日曜日、夜のうちに雨もやみ、朝からのやわらかい陽差しになってくれました。白梅にメジロが8羽、無心に花の蜜を吸っていました。愛敬たっぷりの小鳥です。
 庭のあちこちに黄水仙が咲いて、なんだか心が浮き浮きしてきます。チューリップもぐんぐん伸びています。もう少しで、ツボミになりそうです。
 花粉症さえなければ、春が一番好きな季節なのですが・・・。

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