弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2013年1月28日

日本人は、なぜ世界一押しが弱いのか?

社会

著者  齋藤 孝 、 出版  祥伝社新書

私は一般的な日本人論を読むのを好みません。聖徳太子の「和をもって貴となす」というのは、当時あまりに紛争(裁判)が多かったので、日本人よ、もめごともほどほどにせよと諭したということなのです。ところが、今ではまったく逆に昔から日本人はもめごとを好まなかっただなんて、とんでもない使い方がされています。
 また、イザヤ・ベンダサンにも一時期ころっと騙されてしまいました。なあんだ、正体は日本人だったのか、よくぞなりすましてくれたものだと思いました。とは言っても、この本には得るところがありましたので、紹介します。
 テレビのワイドショーでは、思いついたことの8割は言えない、言ってはいけない。なぜなら、本当のことは、ほとんど人を怒らせることだから。日本のテレビでは、人を怒らせることや傷つけることを言う人は、だんだん出演が減っていく。
 私も、30年ほど前にNHKの朝「おはようニッポン」の全国生中継番組に出演したことがあります。事前の打ち合わせのとき、たとえば国内の先物取引業者を悪く言ってはいけないと釘をきつく刺されました。同じようなだましの手口を使っても、政府公認の業者は許せということです。
 日本人は大陸から渡ってきた民族だ。つまり、押しが弱いために土地を追われ、大陸から押し出されてしまった人々の末裔なのではないか。
 ええっ、これって、ホントでしょうか・・・。信じられません。
 中国人や朝鮮人に比べて日本人は肉食が向いていない。肉は日本人の弱い胃腸には適さない。同じように、胃腸の弱い日本人は量をたくさん食べることもできない。
 日本人は、超肥満になれない。超肥満になるには、それだけインシュリンを多く分泌する能力があるということ。内臓の弱い日本人は、インシュリンもたくさんは出ない。そのため、超肥満になる前に糖尿病になってしまう。
 日本人には「個」が弱いから、一人では生きていけない。集団でなければ生きていけないので、集団で生きるために忍耐力と協調性が必要となった。
 日本は、場の空気を読むことが常に求められる社会である。
 葦原(あしはら)の瑞穂(みずほ)の国は神(かむ)ながら、言挙(ことあ)げせぬ国
 これは『万葉集』におさめられた柿本人麻呂の歌。日本は太古から「言葉にしてはっきり言わないこと」をよしとしてきた。それをしてしまうと争いになるからだ。
 日本人の微笑(ほほえ)みは、人間関係を穏やかにするための相手の配慮である。
 セックスは全身的な行為なので非常に疲れるうえに、気を遣うので、精神的にも負担を感じてしまう。セックスは対人行為なので、ストレスが生じるが、自慰はストレスがないから気が楽だ。
 日本人の学校好きは筋金入りだ。その証拠に日本人は同窓会が大好きだ。
 日本の古文は、世界に誇るべき奇跡の文章だ。古文は、誰が、誰にというのがほとんど書かれていない。読み手が、それらをすべて補わなければならない。古文は、すべてが曖昧である。
日本の文化には、お笑いと温泉と食べ物という三つの世界に誇るべきものがある。
 日本人は押しが弱いけれど、その分穏やかという特性をもっている。性格は、明るくまじめ、几帳面で粘り強い。
 今どきの学生は、ケータイ(スマホ)がネットしか使っていない。一人ひとりが自分の見たいときの自分の見たい情報しか見ないようになっている。これは、とても危険なこと。情報の共有ができなくなっている。
 多くの人が同時に情報を共有していることは、それ自体がとても大切なこと。なぜなら、みんなが知っていることで初めから話がすすむということがあるから・・・。
 弁護士の中にも口頭での討論を不得意とする人が増えてきて、心配です。
(2012年6月刊。780円+税)

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