弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年12月24日

おれたちの青空

社会

著者  佐川 光晴       、 出版  集英社   

 親に見捨てられた子どもたちが世の中にたくさんいます。児童相談所も児童養護施設も残念ながら大繁盛しています。
 そして、中学生までしか児童擁護施設にはいれません。ではどうするか?
中学を出たら自活するしかない。そうはいっても、16、7歳の若者がつける仕事なんて、世の中にはほとんどない。そこで、職員は、なんとか高校へ進学させて、18歳まで施設で面倒をみようとしている。
 この本は、そんな児童養護施設が舞台となっています。どんな背景を持った子どもたちなのか。その親は何をしていたのか。そして、養護施設を運営している大人(女性)は、いったい、なぜ、どんな思いで、このしんどい仕事を毎日続けているのか・・・・。
いろんなストーリーがからみあって話は多面的に進行していきます。日本の社会が有名な大学に入るだけでは幸せな将来を約束するものではなくなっていることも強く示唆されています。それでも、やっぱり学歴偏重の社会です。
 子どもたちにとって、真に自立して生きていく力を身につけることがもっとも大切なことだと、みんなで、もっと強調する必要があるように思います。
 橋下徹は、きっとこんな教育現場なんて、まったく無駄だ、不要だと、バッサリ切り捨ててしまうのでしょう。恐ろしいことです。それは、みんなで支えあう社会づくりと真向うから対立するものです。橋下徹流の「自己責任論」は、結局、日本という国の力を全体として弱めるものでもあります。だって、強い人だけが富めばいいというのでは、おおかたの国民はしらけてしまうばかりでしょうし、国民のまとまりがなくなりますからね。
(2011年11月刊。1200円+税)

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