弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年12月25日

蜩の記

日本史(江戸)

著者   葉室 麟 、 出版   祥伝社

 ひぐらしのき。このように読みます。しっとり味わい深い、江戸時代の武士を描いた小説です。休日、コーヒーショップをハシゴしながら読みふけりました。
 戸田秋谷(しゅうこく)は、かつて郡奉行(こおりぶぎょう)まで勤めていた。若い頃から文武に優れている。江戸表の中老格要人にまで出世したが、今では山村に幽閉され、藩史の編纂にあたらされている。10年内に完成した時点で切腹という処分を受けている。
話は秋谷が切腹を免れることになるかどうか、なぜ切腹される事件を起こしたのか、その真相は何か・・・。スリルにみちた展開なので、片時も目が離せません。そこで、寸暇を見つけてコーヒーショップに入りこんで読みすすめ、一気に読了することが出来たのでした。この作者の筆力は、いつもながら、たいしたものです。
 藤沢周平は東北の架空の海坂(うなさか)藩を舞台にしてますが、こちらは、福岡藩に近い羽根(うね)藩ということですので、秋月藩あたりを想定しているのかなと思って読みすすめました。
 子どもたちが登場し、恋人を大切にする女性もいて、いろどりあざやか、すっきりした読後感の一冊です。
(2011年11月刊。1600円+税)

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