弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2010年7月 8日

戦場からスクープ!

ヨーロッパ

 著者 マーティン・フレッチャー、  出版 白水社 
 私と同じ世代のイギリス人記者の半世紀です。よくぞ危険な戦場を生き延びたものだと思います。私には、とてもこんな勇気はありません。
 地雷には、対人と対車両の2種類がある。地雷は地面の下2インチの深さに埋められる。対人地雷を爆発させるには、ほんの10~40ポンドの重さがあればいい。対車両なら350ポンドだ。
 対人地雷は、地表で爆発し、兵隊の足に損傷を与える。1人の兵隊が片足を失えば、その男を安全な場所にまで運ぶのに兵隊が別に2人必要となる。合計で3人の兵隊が戦闘から排除される。いやはや、とんだ計算がなされています。
 アフガン人は、尻を拭くのに左手を、食べるのに右手を使う。だから、盗人の右手を切るのは、きわめて厳しい罰になる。盗人は右手だけでなく、友人たちと食事をする能力をも失う。なぜなら、男の左手が使った碗から食べる人間はいないから。つまり、男はアウトカーストになってしまうのだ。これって、辛いことですよね。
 ボスニアにNATOが介入したのは、2年間で20万人が死亡したから。だが、ルワンダでは4週間で20万人が死亡した。にもかかわらず、世界はそっぽを向いていた。なぜか?
ルワンダには、戦略的重要性もなく、語るべき資源もなかったからだ。
 キャンプにいる難民25万人のほとんどが、ジェノサイドを逃れてきたツチ族ではなく、ツチ族の報復を逃れてきたフツ族だった。つまり、キャンプで救援機関が助けていた人々のほとんどは、フツ族の殺人犯とその家族だった。フツ族は逃げ、ツチ族は死んでいた。
 歴史は、欧米のメディアにとって、アフリカの血の価値がヨーロッパの血の価値ほど重くないことを示している。メディアには、たとえば10年間にわたってバルカン半島を重点的に取材する余裕はあったが、ルワンダのことは手遅れになるまで無視した。
 戦争ジャーナリストのすさまじい日常生活が描かれています。いやはや、世界にはかくも悲惨かつ過酷な戦場があるのですね。平和を守りたいとつくづく思ったことでした。今こそ日本国憲法9条2項を守り抜きましょう。暴力と戦争の連鎖は御免です。これを平和ボケなんて言わないでくださいね。
(2010年1月刊。2600円+税)
 先日新聞の訃報欄で、後藤竜二氏が亡くなられたことを知りました。私が司法試験の受験勉強をしていたとき、友人から「面白い本があるよ、読んでみたら」と勧められたのが、『天使で大地はいっぱいだ』と言う本でした。
 難しい法律議論の世界で頭を悩まし、失語症になったかと思うほど日常会話をしなくなったなかで、生き生きと躍動する子どもたちの世界は、まさに一服以上の清涼剤とでもいうべきものでした。苦しかった受験生活とともに思いだされる本です。
 昨日の新聞に、法人税率の引き下げを管首相が前倒しで実施すると報じられていました。日本の大企業の実効税率は、20%もないところがいくつもあるようです。それをさらに引き下げるつもりのようですが、それではいったい、消費税率の引き上げは何のためなのでしょうか。疑問だらけです。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー