弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年8月29日

アメリカ福祉改革の悲劇に学べ

アメリカ

著者 エレン・リース、 出版 耕文社

 アメリカの生活保護は、一人につき最長5年間しか受けられない。そして、日本の知事会が日本でもアメリカと同じような期間制限を求めて運動している。
 ええーっ、なんということでしょう。許せません。ひどい話です。道州制で地方分権と言っている裏で、とんでもないことを要求しているのですね。絶対許してはいけません。怒りに頭がフラフラしてきました。いえ、決して夏の暑さではありませんよ。プンプンプン。
アメリカでは生活保護を受ける人が1970年代から1980年代末までは1000万人ほどだった。ところが1990年代に入って増加し、1994年には1416万人(503世帯)まで急増した。そのための支出は209億ドル(3兆円)になる。
 そこで、アメリカ政府はこの支出を削減しようとした。そのため、TANF(貧困家庭一時扶助)は国民の権利というものではなく、あくまで政府が決めた予算の範囲内ですればよいものとされた。
 そのうえ、受給者には就労活動などが義務付けられた。その結果、1416万人だった受給者が、460万人と7割にも減ってしまった。福祉の支給額も310億ドルだったのが284億ドルにまで減った。
 アメリカでは福祉を失うと、ホームレスになる可能性に直結している。
 このようなアメリカにならって、知事会と市長会は2006年10月に有期保護を提案したのです。そこでは、生活保護制度が国民の自助自首の精神と調和しないことも理由にあげられています。
 とんでもない提案です。年金額よりも、生活保護の額が高くなっているので問題だともされています。いえ、年金のほうがあまりに低すぎるのです。いやはや、とんでもない提案がされているものですね。ちっとも知りませんでした。
 知事会の会長って、福岡県知事ですよね。その前に、生活保護制度の充実こそ先にやるべきではありませんか。弱者を切り捨て、力のある強いものにしか目を向けないようでは、地方自治体の役割を果たしたことになりません。情けない知事たちですね。ひきずりおろしてやりたいものです。
 
(2009年7月刊。667円+税)

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