弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年8月30日

ルポ 医療事故

社会

著者 出河 雅彦、 出版 朝日新書

 医療現場はミスの起きやすいところ。すべての患者が同じ治療内容で、つかう薬の種類や量が単一であれば、間違いはほとんど起きないだろう。しかし現実には、患者一人ひとりの病気は違い、当然、治療に使われる医薬品・医療機器の種類や量は、すべて異なる。そして、一人の患者でも、ずっと同じ治療内容とは限らない。容体は刻々変化する。検査値が変動すれば、一度出された投薬や処置の指示が途中で変更されるのも珍しくはない。
 医療は、準備段階から実施まで、医師・看護師・薬剤師など多くの職種の職員が関わる。治療に必要な情報はチーム全体で共有される必要があるが、その伝達の過程で不正確に伝えられる危険がある。
 しかも、病院は人手不足で、看護師らは多忙を極めている。患者の高齢化、重症化に加え、国が患者の入院日数の短縮を図っているので、患者の回転が速くなり、医療者の負担が増す。
 医療用医薬品は1万数千品目もある。そのなかに、タキソールとタキソルテル、そしてアマリールとアルマールといったように、効能や容量が異なるのに、商品名がよく似ているため、取り違えやすいものがある。
 過去に大きな医療事故を起こした病院については、事故の調査報告書をホームページで公開したり、再発防止に取り組んでいるか確かめておく必要がある。過去の失敗を忘れようとしている医療機関は、事故を繰り返す恐れがある。
 患者の身体を危険から守る役割を期待されているのが、術中の全身管理を担当する麻酔医だ。患者の身が危険にさらされそうになったら、躊躇することなく執刀医に「待て」と命じられる強さを備えていてほしい存在だ。
 医療事故にあったのではないかと疑ったときに取るべき行動は……?
①医療機関側に不審点を繰り返し尋ね、カルテなどの診療記録の開示を求める。
②治療前から事故までの経過を思い出し、記憶が薄れないうちに時系列で記録をつける。
③死亡事例では、遺体や死亡直後の周囲の様子を写真にとっておく。
④医療機関側との話し合いは、すべて録音しておく。
⑤医療機関側との話し合いに、知り合いの医療関係者に立ち会ってもらう。
⑥医療機関側に外部の第3者を交えての原因調査を求める。
⑦医療問題に詳しい弁護士に相談する。
 いやあ、まったくそのとおりですね。
医師法21条は、医師は、死体または妊娠4か月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出さなければならないと定めている。ただし、「異状」とは何か具体的に定められていないため、医療関係者に戸惑いがある。
1999年の届出20件が、2004年に199件と急増した。そして、その後の2007年には、1941件になっている。病床100床あたりの医師数(2002年)は、日本は13.7、イギリス49.7、フランス42.5、アメリカ66.8となっている。これらの国々は、日本より3-5倍の医師が配置されている。日本の医師は絶対的に足りない。
日本政府も、医師の抑制策を転換した。日本の医療費は、先進国のなかで最低の水準である。対GDP比で8.0%しかない。
日本でもヨーロッパ並みに医療費をタダにすべきだと思います。選挙の公約として民主党は高速道路料金を無料化にすると言っていますが、それに必要な財源は1.3兆円だそうです。こんなお金があれば、高齢者や子どもの医療費をすぐに無料にできます。
それに、今以上に車が走ったら大気汚染もひどくなるばかりではありませんか。
自民党は1000円、民主党はタダ。これが選挙の争点だなんて、悲しくなります。

 
(2009年3月刊。860円+税)

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