弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年8月28日

よく分かる自衛隊問題

社会

著者 内藤 功 紙谷 敏弘 ほか、 出版 学習の友社

 日本の自衛隊の現状と、そのかかえる矛盾、問題点を、コンパクトにまとめたブックレットです。大変よく分かりました。一読をおすすめします。
 軍事用語は、本質をごまかそうとする動きのなかで、大変分かりにくいものになっている。たとえば、陸海空三自衛隊の統合運用という用語によって、陸海空三自衛隊の幕僚長の格付けが変わり、対外的には「大将」格になった。ええっ、日本の自衛隊に大将なんていたの……、驚きました。
 日本の自衛隊は、いま、「本物の軍隊」を目指している。
①外敵に対して、国家権力の発動としての軍事力(武力)を最高度に行使できる
②軍事行動について、国民や国家・地方機関に協力を義務付けできる
③軍人に関わる事件について、軍刑法、軍事裁判所、憲兵といった軍固有の捜査・司法機関を保有する
 そして、今の自衛隊には、次の4つの特徴がある。
①アメリカの戦略に組み込まれていること
②外征軍(攻撃的戦力)としての性格を強めていること
③国民を敵視し、監視する性格を強めていること
④憲法に違反する存在であること
 日本の自衛隊が、いま任務づけられている作戦行動は、単なる戦闘ゲームではなく、生身の人間がやる殺傷破壊行為である。ところが、肝心の隊員、とくに下級隊員の精神的支柱の脆弱さは、自衛隊内に大きな矛盾を生んでいる。
 現在、自衛隊員にも憲法の基本的人権は保障されている。「諸君のイノチは、この隊長が預かった」とイラク派兵のときに指揮官が訓示した。しかし、生命を捨ててまで、という気にならない隊員が少なくない。
 2008年4月、陸海空にあった保全隊を全部まとめて、情報保全隊本部をつくった。隊員と家族の思想調査を担当し、あわせて国民を監視する機関である。
 自衛隊員は25万人、防衛省本省の文官(背広組)が2万人、合計27万人もいる日本最大の国家公務員組織。
 そうなんですよね。公務員が多すぎるというとき、真っ先に減らすべき存在です。
 フォースプロバイダー(FP)とフォースユーザー(FU)というように、司令官の役割分担を明確にした。これは、アメリカ海軍の方式を踏襲(ふしゅうとは読みません)したもの。
 イラクに派遣された陸上自衛隊員は、のべ5500人。戦地イラクを体験した幹部。隊員は、その後、要職に就いている。イラク派兵部隊の15人にのぼる群長・隊長のうちの3分の1が、一佐から陸将補に昇給した。陸上自衛隊のすべての基幹部隊に「戦地」経験をさせるという壮大な幹部教育を実施する意図があった。そして、イラクでの兵器・施設・設備の戦時使用を学び、生かすことができた。
 自衛隊のイラク作戦の目的は、イラクの復興支援であると同時に、一人の犠牲もなく隊員全員を日本に連れて帰ることであった。
 なーるほど、だからサマワの周辺地域に金をバラまいて、安全を買ったわけですね。
 日本の国防費は、諸外国に比べて他省庁に組み込まれているものもあり、トータルすると総額は9~10兆円規模にまでなる。世界有数の軍事費大国なのである。
 選挙戦で財源問題が焦点になっていますが、総額10兆円にものぼる軍事費を半減させたら、老人と子どもの医療費の無料化は直ちに実現できますし、日本の福祉も劇的に改善・向上するのです。軍事費こそ、何よりのムダづかいではありませんか。

 コモ(イタリア)の駅で、ミラノまでの特急列車の切符を窓口に並んで買いました。自動販売機で買おうとしたのですが、ドイツ語表示なので分かりません。別の若者たちも自動販売機で買おうとしていましたが、同じように買えず、窓口で買っていました。
 ミラノまでの往復切符をなんとか買って、ホームに入りました。すると、予定より早いのですが、列車が入ってきました。ミラノ行きであることは間違いありません。迷うことなく乗り込みました。すると、これが大正解だったのです。この特急列車は、ミラノ中央駅行きではなく、ミラノ・ガリバルディ行きでした。途中で検札に来たら、ドイツ語が解らなかったからととぼけるつもりでいたのですが、心配した検札は来ませんでした。
 ガリバルディ駅も、もちろんミラノ市内にあります。地下鉄で、中央駅とも結んでいます。ミラノには何本もの地下鉄が走っているのでした。ガリバルディ駅に着いて、よく調べてみると、なんと、コモとも私鉄で結びついています。しかも、ここからミラノ・マルペンサ空港行きの急行列車が出ているのでした。なんだ、なんだ。それでは、明日、コモからこの私鉄に乗ってガリバルディ駅に出て、そして急行に乗り換えてマルペンサ空港に向かうというのが一番安全・確実なコースじゃないか。すっかり安心しました。でも、一応、ミラノ中央駅からマルペンサ空港までの足も調べておきましょう。地下鉄に乗って、ミラノ中央駅に着いて驚きました。なんと、とてつもなく巨大な駅です。そして、切符を買うための窓口には何百人もの人々が延々と長蛇の列をなしています。見るからに気の遠くなりそうな光景です。うんざり、げんなりしてしまいました。そそくさとガリバルディ駅に戻りました。次は、何時何分のコモ発列車に乗ったらよいかです。駅の時刻表を見てみます。6時30分にコモを出て、ミラノに7時半に着く列車があると書いてあります。よし分かった。コモ駅に着き、念のために明日の日曜日、コモ発、ミラノ着で6時か7時の列車はどれですかと尋ねました。すると答えは日曜日に出ているのは6時17分だけ、次は7時17分だというのです。ええーっ、なんということ……。驚きました。だって、ミラノ・ガリバルディ駅には6時17分発の列車なんて書いてなかったのですよ……。でも、コモ駅の係員が嘘を言うはずはありません。時刻表にも確かにそう書いてあります。
 翌朝、ホテルを出たのは6時15分前です。スーツケースを引っ張って、6時少し前に着きました。間違いなく、6時17分発と表示された列車がいました。ミラノ・ガリバルディ駅でマルペンサ行きの急行に乗り換えました。大学生らしい若者たちでほとんど満席でした。
 あてにならない駅の時刻表に、今も不思議でなりません。
 
(2009年4月刊。1500円+税)

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