弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年5月23日

僕たちの好きだった革命

社会

著者:鴻上尚史、出版社:角川学芸出版
 実のところ、読む前は全然期待しておらず、車中で昔の学園紛争についての資料みたいに軽く読み流すつもりでした。ところが、さすがはプロの書き手ですね。次はどういう展開になるのか知りたくて、ぐいぐいと引きこまれてしまいました。
 今から40年前、学園闘争を果敢にたたかった人たちが、その後どんな仕事と生活をしているのか、私も大いに興味と関心があります。この本は、30年前の学園闘争のとき機動隊に頭を直撃されて植物人間となった高校生が、30年後に目が覚めて現代の高校に復学したという、とてもありえない設定で始まります。今どきの高校生と30年前の高校生徒で話が合うはずはないのですが、そこは同じ日本人なのです。いつのまにか共通するところが出てくるのが不思議なところです。
 しかも、現代の高校の教頭先生が実は30年前の全共闘のリーダーであったり、今どきの高校生の親たちが、実は、かつての全共闘の活動家だったりするわけです。となると、内ゲバの悲劇も登場せざるをえません。そうなんです。そのトラウマを今も引きずっている母親がいたのでした。
 これらを一つのストーリーに仕立てあげて読みものにするあたりは、私に真似できそうもない小説家の技(わざ)ですね。
 「オレたちは夢を見ていたのかもしれん。マルクス主義という夢、人類の平等と解放という夢、だがなあ、おまえが30年ものあいだ寝ているあいだに、ソ連を初めとする社会主義国は、続々と崩壊したんだ。あの当時の理想は消え去った・・・」
 「そんなことじゃない。あなたは賢いから、マルクスとか、いろんなことを考えていたでしょう。でも、ぼくは、自分たちの文化祭だから、自分たちだけでやりたい。自分たちの文化祭の内容を先生ではなくて自分たち生徒が決めるのはあたり前、それだけだったんですよ。それって間違いなんですか?」
 団塊世代よりちょうどう10年若い著者による本です。この本を読んで学園紛争とか全共闘について関心をもった人には、『清冽の炎』(神水理一郎。花伝社)をおすすめします。相変わらず売れていないそうです。私は、なんとか売れるように必死で応援しています。
 食事をすませ、夜、うす暗くなったころ、歩いて近くの小川に出かけます。ホタルに会いに行くのです。夜8時ころがホタルの飛んでる時間です。道端をフワリフワリと飛んでいます。そっと両手でつかまえ、ホタルの光を指のあいだにしばらく眺め、また放してやります。ホワンホワンと光るホタルって、すごくいいですよ。手にのせても、まったく重さを感じません。童心に帰るひとときです。
(2008年2月刊。1700円+税)

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