弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年12月27日

清冽の炎 第2巻・碧山の夏

現代史

著者:神水理一郎、出版社:花伝社
 この本を読んだ読者が出版社に送った愛読者カードをまず紹介します。
 いつかセツルメントの体験者の本が出ると待ちわびていました。1974年から4年間、私はF市で学生セツルメントをやっていました。セツル用語でいうOSです。時代はちょっと違いますが、懐かしいです。あれから30年。今でもOSをセツラーネームで呼びあっています。今後も続けて書いて下さい。
 この本は、サブ・タイトルで1968東大駒場とあるように、1968年の東大駒場での出来事が描かれています。6月、安田講堂を占拠した学生を排除するために機動隊が導入されました。当局の一方的な機動隊導入に東大の学生が安田講堂前で6000人大集会を開きました。
 この第2巻は、その続きとして7月1日から始まります。東大駒場では大教室(900番教室)で何度も代議員大会が開かれ、激しい議論が続いたうえ、ついに無期限ストライキに突入することになりました。
 セツルメントは夏は合宿の季節です。奥那須の山奥深くにある三斗小屋温泉にセツラーが50人ほども4泊5日で合宿し、徹底的に議論しました。夜は闇ナベ、昼はハイキングもあります。人生を語りあう、楽しくも厳しい夏合宿です。路線の対立も表面化してきます。社会をどうとらえるか、将来、自分のすすむべき進路はどうするか、さまざまに心が揺れ動くなか、恋愛を語ります。
 若者サークルにやってくる青年労働者のなかには会社からアカ攻撃を受け、脱落していく人も出てきます。単に真面目に勉強したいと思っても、左翼思想に染まったと会社から思われると排除されていく苛酷現実が彼らを待ち受けているのです。
 9月に新学期が再開してもストライキは続行中。闘争の獲得目標がみえにくくなっているなかで、全共闘はバリケードストライキへ戦術をアップさせようとします。それではかえって学生の団結が損なわれ、闘争勝利は難しくなると反対する力が一段と強まり、ノンセクト学生がクラス連合を結成します。
 セツルメントの地域の実践とは何か、1968年の東大闘争はどのように進行していったのか、著者渾身の大作第2弾です。ぜひ買って読んでやってください。
 第3巻は1968年10月、11月を取り上げます。10.21沖縄闘争、11.22全国学生1万人集会と、そして東大と全国の学園闘争は、いよいよ大きく盛り上がります。
 第4巻は12月、1月そして第5巻は2月、3月と続きます。そのあとは、登場人物の数十年後の現在を描いた第6巻が予定されているのです。
 ところが、第1巻はさっぱり売れず、第2巻の売れ行きも芳しくはありません。 どうぞ、みなさん第6巻の完成が実現するよう応援してください。よろしくお願いします。

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