弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年12月26日

JALの翼が危ない

著者:安田浩一、出版社:金曜日
 ボーイング777のエンジントラブルが相次いでいる。故障したエンジンは、アメリカのプラット&ホイットニー社製のPW4000シリーズ。製造工程でミスが起きた欠陥エンジンだった。
 これを、一斉に取りかえるのではなく、部品不足から、程度の悪いものから交換していった。これはJALだけではなく、ANAも同じこと。
 ハイテク自慢の最新鋭機といっても、ハイテクは安全を主眼においてはいない。あくまでコストダウンのため。乗員の数を減らして人件費を圧縮することにある。コンピューターの導入によって、パイロットの訓練時間を減らした。これによって、パイロットの賃金も減らした。
 そして、整備士を大幅に削減している。1994年に国内大手3社で8000人いた整備士が、2005年には、なんと5000人にまで減っている。そのうえ、JALもANAも整備の外注化を進めている。今や自社整備は全体の3割にすぎない。外注化の先は、中国・アモイのテコ社とシンガポールのサスコ社だ。国内で整備するより3分の1の費用ですむ。
 両社の整備不良が目立っている。そこでは整備は単なるビジネスでしかない。日本の10分の1という安価な労働力をつかって工場の流れ作業のようにすすめられていく。
 1994年までは原則として自社整備だった。それが規制緩和の流れのなか、航空法が改正され、整備も海外に委託できるようになった。
 飛行機が飛行場に着陸して離陸するまでの飛行間点検については、これまで整備士が2人でしていた。しかし、今は1人のみ。しかも、30分しかない。整備士が故障箇所を見つけたとき、管理職が、「あいつはなんで余計なものを見つけたんだ。定刻に飛べなくなるじゃないか」と怒った。ええーっ、そんな・・・。本当に怖い話です。
 さすがに政府専用機だけは、そんな話とは無縁です。マニュアルの整備項目以上の完璧な整備が尽くされている。
 JALが危ないというタイトルですが、ANAの方がもっと危ないという指摘もあります。JALはANAの水準にまで下げつつあるというのです。ANAの労組は御用組合となって、利益本意の経営陣をチェックする力をもっていないというのです。おーこわ。ブルブルっと震えてしまいます。
 JALのパイロットは合計2400人。そのうち140人が健康上の問題で飛べない。在職者の平均死亡年齢は、なんと43歳。パイロットは短命というのは事実のようだ。
 そこで、JALグループは、外国人パイロットを300人も雇っている。パイロット不足を外国人で補う方向にある。
 スカイマークについても紹介されています。ひどいものです。公共性(安全性)は二の次だと社長は高言しているのです。整備不良のまま9ヶ月も飛行機を飛ばしていた事実が指摘されています。安ければ安全は保障しないのは当然だというのがスカイマークの経営陣のモットーのようです。間違っていますよね。
 私の身近に飛行機には絶対乗らないという人が何人もいます。そんな人は、この本を読むと、ますます乗る気がしないでしょうね。でも、私のように月に2、3回は乗る人間にとっては、安全の確保こそが第一番にしてほしいことです。値下げサービスの前に、やっぱり安全ですよ。お願いします。

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