弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年12月20日

和を継ぐものたち

著者:小松成美、出版社:小学館
 この国にはまだ、あなたの知らない仕事がある。オビにそう書かれていますが、実際そのとおりでした。うむむ、すごーい。つい何度もうなってしまいました。
 香道というのがあるそうです。初めて知りました。一定の作法にもとづいて香木を焚(た)き、その香りを鑑定するのが香道です。香りを楽しむことを、聞くと表現します。まさしく風雅の道です。室町時代、足利義政のころ香宴の指導的役割をつとめ、香道の始祖といわれる三條西(さんじょうにし)実隆(さねたか)からはじまり、今も23代公彦(きんよし)が香道にいそしんでいるのです。
 香りをゲーム形式で楽しんでいるのは、恐らく日本だけ。ヨーロッパの香水とくらべると、日本の香木の香りは香水ほど強くないので、鼻のなかに前の匂いがずっと残ることはない。香りが強烈でないから、繰りかえし繰り返し、長いあいだ楽しむことができる・微(かす)かな匂いだからこそ、今まで続くことができた。公家が愉(たの)しんだ練香のつくり方は、代々名家の秘伝だった。練香は、練り固めたあとに壺にいれて10日ほど土の中に寝かせてからでないと使えない。だから、すぐに薫物あわせなどの遊びはできない。
 楊貴妃は、自分のつくり方で練香をつくり、それを飲んでいた。そうすると、身体の中からいい香りがしてくる。うへーっ、本当でしょうか。今そんなものを商品として売りに出したら、爆発的に売れるんじゃないでしょうか。
 香木は、樹液が固まるとき、空気中にある細菌と結びついて樹脂ができ、それが沈着して固まったもの。やがて木が朽ちて倒れて土の中に埋まると、木の部分が腐ってなくなるが、樹脂の部分は残る。それを現地の人が探し出すというのが昔からの採取法だった。
 和ローソクをつくり続けている人がいます。昔ながらのハゼの木の実から絞ってつくる製法です。和ローソクは、仏教伝来にともない中国から入ってきた。奈良時代には和ローソクがあった。本体はハゼの木の実を絞ったものを原料とし、灯芯はイグサ科の灯芯草をつかう。畳表用のイグサとは別のもの。
 一本のローソクを完成させるのに、5日から一週間かかる。和ローソクは原料が植物なので、溶けたときの香りが自然で心地いい。洋ローソクはパラフィンなどの石油をつかうので、仏壇などのススがべったりしているが、和ローソクだと簡単に洗浄できる。
 流鏑馬(やぶさめ)をはじめ、日本古来の弓馬道(きゅうばどう)を伝える武田流。日本古来の馬術は西洋の馬術とまったく異なる。乗り方も、鞍鐙(くらあぶみ)も全然違う。西洋馬術では、なるべく馬に負担をかけず、馬の操作をしやすくしてある。それで障害を飛んだり芸をしたり、そういうことに適した鞍の構造になっている。
 日本馬術のポイントは鐙。鞍ではなく、鐙に重きをおく。鐙をきちっと踏み、上体を立ち透かすという乗り方は、日本だけの発想。たとえば戦闘では、槍や弓をもったら手を離して鐙と脚だけで馬を操作する。それができるからこそ槍や弓を使いこなせる。日本の鞍や鐙は、そのために機能的かつ合理的なつくりになっている。
 ところが、明治になって西洋一辺倒になった結果、日露戦争では、ロシアのコザック騎兵に敗れてしまった。黒澤明監督の「七人の侍」「影武者」には、この武田流の馬術が正しくとり入れられている。ひゃあ、そうだったんですかー・・・。
 流鏑馬は難しいのでは、という問いかけに対する答えは次のようなものです。
 座禅を組むと、いわゆる無我の境地が訪れるというけれど、それが馬上で起こる。的が異様にゆっくりと近づいてきて、なんでこんなに大きい的なんだろう。これならどこを射っても当たるんじゃないかと思える。また、弓を構えると的まで白い線が伸びて、矢を離すと、その線のとおりに進んで的に当たる。
 ホントにこの世はまだまだ知らないことだらけですね。

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