弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年12月19日

戦争大統領

著者:ジェームズ・ライゼン、出版社:毎日新聞社
 コンドリーザ・ライスはブッシュ大統領と親密な結ぶつきはあるが、重要な案件を実行する能力や権限に欠けていた。外交政策を立案したのは、副大統領府や国防長官官房など、ふつうでは考えられない部署で、それもごく少数のスタッフによって行われた。
 ホワイトハウスでは政策が議論されないのが、あたりまえになっていた。ブッシュ大統領の上級補佐官が正式な会議を開いてイラク侵攻の是非を議論したことは一度もなかった。きちんと機能する管理機構が欠けていることが、ブッシュ政権の外交政策の大きな特徴になっている。そのため、ろくに検討もされずに過激な決定が実施されてきた。
 ええーっ、ウソでしょ。そう叫びたくなる記述です。
 ブッシュ大統領は、FBIや国防総省を除外して、CIAにアルカイダ幹部の処理を一任した。FBIでなく、CIAを第一の担当部局にしたのは、法執行機関を中心にテロと戦うというクリントン時代のやり方を一変させるためだった。アルカイダは法執行機関が対処する問題ではなく、国家安全保障に対する脅威であるというのがブッシュの判断だった。だから、アルカイダ幹部をアメリカに連行して公判にかけるというやり方はしない。
 大人数の捕虜を拘禁する収容所を運営した経験のないCIAが、手荒な手段を用いてもよいというゴーサインをもらうと、それまではジュネーブ条約を遵守することで定評のあったアメリカ軍もルールを変えた。CIAの収容所が、ひそかに世界各地に建設された。一ヶ所はアフガニスタンにあるが、もう一ヶ所は厳重秘となっている。タイやポーランド、ルーマニアなどにも収容所がある。CIAは、被収容者の身許を明らかにしていない。
 NSAは、ターゲットとするアメリカ人ほとんどすべての電子メールを傍受する能力を備えている。インターネットの知られざる本質のひとつは、インフラをアメリカが独占していることで、世界中の電子メールのトラフィックの大部分は、アメリカ国内にあるキャリアのネットワークを一度は経由する。つまり、ドイツとイタリア間の電子メールがアメリカを通って送られることがある。ブッシュ大統領の秘密命令によって、NSAはアメリカ国内の無数の電子メールに加えて、海外の電子メールをなんの制約もなしに詳しく調べられるようになっている。
 NSAがプログラムによって電話と電子メールを監視している海外在住の対象者は7000人に及ぶ。アメリカ国内の500人の通信もターゲットになっている。NSAは一日平均数千件の電話や電子メールなどのアメリカ国内の通信を傍受している。
 CIA上層部は、何年も前からイラク情報の収集に重大な欠陥があるのを承知しながら、イラクには大量破壊兵器があるという情報を強引に広めてきた。イラクではスパイを勧誘できないという致命的欠陥を当時のCIA上層部はみな承知していた。
 CIAのバグダッド支局長は、状況の悪化を率直に報告書に書いた。しかし、真実を告げるという、許されざる罪を犯したことになった。2003年夏に同支局に勤務している人員は80人以下だった。同年末には300人以上となっていた。支局長は、その年のうちに突然、失脚した。
 2005年夏、CIA長官はイラクでアメリカは敗北を喫しつつあるという秘密のブリーフィングを受けた。CIAが率直になったのは、イラク戦争が失敗になったことが多くのアメリカ国民に明らかになったあとのことだった。

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