弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年10月20日

分断される日本

著者:斎藤貴男、出版社:角川書店
 日本の格差社会を英語でいうと、どうなるか。それは、不平等としか言いようがない。しかし、行政当局は、格差とはいっても、不平等とは言わない。格差はどこまでも客観的な現実をあらわす表現でしかない。ところが、不平等といってしまったら、そこには行政の失敗のイメージが生まれる。
 そうなんですね。格差がどんどん拡大していっていますが、それは貧富の差がますます大きくなって、貧乏人はさらに貧しくなり、その対極にいるスーパーリッチは徹底して肥え太るということなんですよね。もはや「一億総中流社会」なんてことは誰も言えなくなってしまいました。とっても残念なことです。
 先日の日経新聞(10月11日)によると、100万ドル(1億1900万円)以上の純金融資産をもつ個人を富裕層と定義し、日本には141万人いるといいます。アジアの富裕層の6割近くを日本人が占めています。2位は中国の32万人で、韓国、インドと続きます。そして、富裕層の保有資産総額でみると、日本はアジア全体の5割近く(46%)を占めるというのです。さらに、純金融資産が3000万ドルを上回る超富裕層についてみると、日本人の比率は30%で、中国の29%に並んでいます。
 いやあ、日本のリッチ層って、こんなにも層が厚いんですね。こういう金持ち層が金持ち減税を推進し、規制緩和をすすめ、福祉をバッタバッタと切り捨てているのですね。
 毎日新聞(10月17日)によると、東京では英国製生地をつかった60万円のスーツが30代の男性に売れている、1足10万円もするフランス製の靴がどんどん売れているといいます。そして、豪華客船で世界一周するクルーズ・プランは1人300万円〜
2000万円もするのに、即日完売でキャンセル待ちが出ているとのこと。それに反して、年収200万円以下の人が981万人にもなったというのです。世の中は不平等がますます深刻になっています。
 ゆとり教育とは何か。できん者はできんままで結構。限りなくできない非才や無才には、せめて実直な精神だけを養ってもらったらいいのだ。これまでできない子たちにかけてきた手間とヒマ、そしてお金を浮かせて、これをエリートたちにふり向ける。そのエリートたちが将来のわが国を背負っていってくれる。つまり、ゆとり教育とはエリート教育のこと。ズバリそうだとは言いにくいので、まわりくどく言っただけのこと。
 なーるほど、そうだったんですか・・・。でも、それがうまくいかないことは、日本の現状が証明しています。むしろ、できない子にも手をかけるフィンランド式の教育を見直すべきだと私は思います。

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