弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年10月20日

明日のブルドッグ

著者:高橋三千綱、出版社:草思社
 ブルドッグを飼うのは大変だ。とにかくむつかしい。なんたって手がかかる。冬の寒さに弱い。オスは、いうことをきかないので、まるで大変だ。ブルドッグは皮膚が弱い。
 ブルドッグに訓練は向かない。犬のなかでももっとも頑固な犬で、訓練しようにも、言うことをきかない。とにかくマイペースの犬で、自分の好きなようにしか動かない。人間が創ったくせに、人間のいうことをもっともきかない犬だ。
 マイペースだけど、ブルドッグほど愛情の深い犬はいない。
 猟犬と違って、そんなに走るのが得意な犬じゃない。とにかくデリケートな犬なんだ。馬よりずっと敏感で神経質だし、手間もかかる。いつでも人のそばにいたがるのに、構われると、シカトしたりする。
 家人の誰にも媚びようとしない。散歩の途中で犬と出会ったとき、相手の犬がどんなに吠えても見向きもせず、無関心のままだ。
 寒さに強い犬はいくらでもいるが、暑さに平気な犬はいない。毛の長い大型犬にとって、高温多湿の日本の気候は敵といってもいい。ブルドッグの毛は短いが、暑さにはことに弱い。
 妻を従えて角を曲がってきたブル太郎は、30メートルほど先で立ち止まる。向こうに立っている人間は誰だというように顔を上げて毅然としている。数秒後に歩き出す。飼い主を認めたのだな、と思って私はゴルフクラブを手に立っている。喜色満面で飛びついてくるだろうと私は待ち構えている。ところが、ブル太郎は私のすぐそばを通りはするが、顔を上げることも、立ち止まることもせずに、そのまま歩き過ぎてしまう。それを見て妻はくすくすと笑う。ときには、ほらパパよ、と注意を促すこともあるが、犬の方ではまったく無視して行ってしまう。コケにされた飼い主は憮然としてぶっ立っている。
 飼い主の顔色をうかがう犬は多いが、飼い主に対して不機嫌な顔を向ける犬なのだ。
 頭の固さは生まれつきで、そのためブルドッグは帝王切開で子どもを産む。その時点で、すでに親子とも人間の世話になるように出来ている。実際、成犬になってもブルドッグはひとりでは何もしないし、やろうとしない。大便のあと、肛門を拭くのも飼い主の役目である。そうしてくれと尻の穴を突き出してくる。耳の垢を取るのも、鼻をおおう分厚いしわの下の溝を清潔にするのも、すべて飼い主の仕事である。
 この本は飼い犬のブルドッグの様子をそのまま描いた実話だとばかり思って読んでいましたが、実は小説なのでした。それでも、ブルドッグの性格などは本当のことなんだろうなと思いながら、最後まで楽しく読み通しました。
 例の何とも言えない奇妙な顔をしたブルドッグの写真が何枚も紹介されていて、ほんわかした気持ちになっていくのが不思議です。

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