弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年9月 7日

大学生が変わる

著者:新村洋史、出版社:新日本出版社
 青年期は、それこそ疾風怒濤の時代である。
 久しぶりに、この言葉を目にしました。私の青春時代にはよくお目にかかったものです。たしかに、いろんな意味で大いに揺れた年頃でした。
 今の学生たちも、まともな自己形成の道をたどっているし、また、たどることができる。しかし、次のような学生が増えてきたのも事実。本を全然読まない、文章を読解できない。つらい課題に我慢や忍耐力をもって挑戦してみることをしない。嫌なことは絶対にやろうとしない。
 概して授業態度は真面目であり、いわゆる良い子や消極安定型の学生がふえた。精神的に安定はしているが、新機軸をうち出して何かに挑戦してみようという気概が乏しい。表情に乏しい学生、他の学生と関わりをもとうとしない学生の多いのが気になる。
 企業の側から、今の学生について、やる気や学ぼうという意欲が不足している、文章の読み書き能力の不足、何が問題かを見つけて解決する力が弱い、思考力・判断力・表現力が低いという指摘がなされている。なるほど、そうかもしれませんね・・・。
 自分としっかり向きあい、自分をみつめ、自我を拡大していこうという意識や意欲を失っている傾向が強い。自我理想を旺盛に心に描いたり、アイデンティティーを獲得・確立しようと勉強に励んだりすることが青年期の発達特性であるとされてきたが、この力が衰退しているのではないか。
 自己発見、自己形成、自信獲得は学生の求める根源的な課題。ところが、自己概念が否定的で、自己肯定感をもてない学生が多くなっている。
 学生のやりたいことは、私生活にかかわる狭い個人的な世界の事柄、たとえば、おいしいものが食べたい、映画をみたい、スポーツをしたいなど、に限定されてしまう。自分が置かれている現代社会への関心や公共的・共同的な関心が最初からほとんどないという生活感覚が認められる。
 主体的・自律的な学びをしめだし、特定の知識・技能やルールに生徒を適応させていくような大学の学校化、専門学校化は既に極限にまで達している。資格獲得型の大学で、教養や自己形成の教育を創造していくのは、至難の業だ。
 今の大学生は、誰とでも友だちになれるというわけにはいかない。仲間集団は2人から5〜6人。自分のホンネを出して言いあうことは避け、内心の真実を吐露しあうこともあまりない。自分や相手の価値観やプライバシーにかかわる話は避ける。話題は、いきおい、たわいもないことに限られてくる。友人関係、人間関係は貧困で空虚なものになっている。
 これはこれで、けっこう神経をすり減らす。そんな一日を終えて帰宅すると、どっと疲れが出る。明日の授業の予習どころではない。満たされないむなしさ、空虚感をそこはかとなく感じながら、ただぼんやりとテレビを見ながら夜をすごす。仲間集団という親密圏でのこまやかな気遣いは、その反面の公共的・共同的問題に対する無関心や無力感と対をなしている。
 何かの目標に向かって情熱を秘め、孤独に耐えて一人で本を読み考えるという営みができない。このような、仲間集団のなかの自我・人格が交錯しない空虚な人間関係それ自体が、人間としての孤立を意味しているのに、学生は孤立することを恐れている。
 およそ2〜3割の学生しか、自分自身の未来が明るいと感じていない。そうですよね。自分の将来がバラ色、明るいと思える学生なんて今どきいるんでしょうか・・・。
 関心というのは、結局のところ、主体的に世界を読みとり、世界に主体的にはたらきかけていく生き方や価値意識と同義である。
 学生には、不安感や恐怖感が常にある。実は、私も大学生のころ、そうでした。いったい自分は何になったらいいのだろうか、そんな不安と恐怖心をずっともっていました。これはホントのことです。消去法で司法試験をめざすことを決めたとき、一応それは解消しました。でも、受験中は別の不安がつきまといました。この試験にずっと受からなかったら、いったい自分はどの道を選んだらいいのだろうか・・・、と。
 自分がかけがえのない人間だという自己尊重の意識の発達、自我の成長発達を踏みにじるのは大人社会と教育の最大の間違いである。日本の子どもと青年は、学校に行くことや学ぶことを自分の権利とは考えていない。大人社会や親への義務として、仕方なく学校へ行くという観念は今も根強い。
 実は、この本を読んでぜひ紹介したいと思ったのは、今までふれていない著者の大学教育の実践記録なのです。無力感にとらわれていた女子大生がこんなに大学の授業が面白くていいのかな、他人事と考えたり傍観者ではいけないという実感をもてた、自分だってもっと胸を張っていいと自信がもてた、・・・そんな学生に変身していく様子が描かれ、感動的でした。その部分だけでも読むことをおすすめしたいと思ったのです。
 日曜日に久しぶり庭の手入れをしました。ナツメの木に実がなっていましたが、大半は地面に落ちてしまっていました。もったいないことをしました。昨年は、ナツメ酒をつけこみました。少しこってりとした味になっています。ナツメって漢方薬によく登場してきますよね。いま、芙蓉の花が咲いています。そのうち酔芙蓉の花も咲いてくれると期待しています。朝のうち白い花が昼からはピンク色に染まって、いかにも酔った感じの感じのいい素敵な花です。

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