弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年8月 2日

テレビ政治

著者:星 浩、出版社:朝日新聞社
 テレビと政治と世論の危ない関係。新聞とテレビ、国民により影響を与えているのは、テレビで86.5%。これはオビの言葉です。本当にテレビは世論操作の有力な道具です。小泉首相を批判するコラムを書いたら、すぐにコラムを批判する投書が80通も来たそうです。がんばっている首相に失礼だとか、かわいそうだという内容の投書です。私にはとても信じられませんが、恐らく本気なのでしょう。小泉べったりに洗脳されている日本人がかなりいることを意味しています。
 小泉改革のおかげで、郵便局の離島での集配が廃止に追い込まれています。なんでも効率(もうかるかどうか、だけです)から、田舎の不採算局が次々に廃止されていくのは必至です。でも、小泉は、選挙のときにはそんなことはないと断言して国民を欺きました。
 そして、いま高齢者に地方税が10倍になるという重圧がかかっています。「週刊ポスト」が大きな特集を組みました。そんなことは分かっていたはず。小泉はそう言うでしょう。でも、小泉を支持した高齢者は、まさか自分のフトコロを直撃する改革があるなんて夢にも思いませんでした。
 リハビリを6ヶ月で打ち切るという新たなシステム改悪は、私の母にも及びました。たしかに、うちの母にとってリハビリは、もう客観的には効果が期待できません。でも、身内としては、それでもいいのです。カッコだけでもリハビリ中ということでいいのです。必要なお金も負担します。でも、6ヶ月たったからといって、せっかく入った病院を追い出されてしまいました。弱い者いじめの小泉改革のおかげです。
 この本は、朝日新聞の政治記者とメディア政治の研究者の二人による共著です。朝日の記者は東大大学院政治学研究科の特任教授でもありました。
 小泉首相が閣議で解散を決めた8月8日夜の記者会見を中継したNHKの視聴率は、なんと27%という異例の高率となった。投票率が高いと自民党は不利という最近の選挙の傾向とは逆の結果となった。選挙への関心が高まり、ふだん棄権していた有権者が投票所に足を運んだことが、自民党の圧勝につながった。つまり、多くの国民が小泉にだまされて自分の首をしめに投票所に向かったことになります。
 東大の石田英敬教授は、総選挙の真の敗北者はテレビだと主張する。なぜなら、コイズミ劇場にテレビが支配されてしまったから。
 刺客騒動は話題を呼び、世間の関心を集め、当初あまりパッとしなかった毎分視聴率も急上昇した。こうなるとテレビ制作者は弱い。やはり数字がとれた方がいいと考えてしまう。自民党内のお家騒動は、人気時代劇の「暴れん坊将軍」のように、見ていて面白い。ここを小泉はうまく利用した。
 小泉の作戦は、国会議員を飛びこえ、さらには自民党員まで越えて一般有権者の支持を集めることだった。それによって、党員や国会議員への影響力を高めようとしたのだ。
 小泉が国会議員や支持団体の枠をこえて投げかけた「自民党をぶっ壊す」というメッセージは大衆的人気を博した。新聞は権力を批判するが、テレビはコントロール可能。テレビは商売だと割り切って接していた。
 小泉は、ワンフレーズ・ポリティクスという批判に対して、「いくつも話すと、もっとも不快な部分を拡大して報じられる。一つのことしか言わなければ、どのメディアも仕方なくそれを報じる」と切り返した。
 テレビでくり返し唱え続け、なおかつ、そのメッセージをいくらか実現させることで国民に一定のリアリティーを感じさせる。これが小泉の戦略だった。
 日本は世界最大の新聞大国である。毎日、朝夕刊あわせて7000万部以上が発刊されている。それでも、今やテレビにかないません。日本人は、このまま流されていくだけなのでしょうか。

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