弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年5月26日

団塊の世代だから定年後も出番がある

著者:布施克彦、出版社:洋泉社新書Y
 著者も団塊世代です。
 よど号ハイジャック事件や浅間山荘事件など、団塊の世代が世間を騒がせた。一部バカ者の行為なのに、世代全体がショックと自信喪失感に包まれた。
 この「一部バカ者」という表現にはアンチ全共闘だった私にも実は抵抗感があります。著者は当時の大学闘争に没交渉だったのではないでしょうか。よど号事件はともかくとして、連合赤軍事件が全共闘シンパ層に与えた影響は相当に深刻だったと思います。それを簡単に「一部バカ者の行為」として切り捨てられると、そう言われたら、確かにそうなんだけど・・・、という気がしてしまうのです。ただ、その点を除くと、この本で指摘されていることは、ほとんど同感できるものです。現在700万人ほどの団塊世代が生きている。人数が多いというのは、最大の武器である。
 団塊世代のもらう退職金総額は50〜80兆円。2010年の団塊世代関連市場は100兆円をこえる。国民総資産1400兆円の過半数を中高年世代が握っている。
 ところが、団塊世代の多くが自信を失っているように見える。かつて、腕に覚えがあり、仕事の虫だった団塊世代。順風と逆風の両時代を知る柔軟性もある。バブル経済時代までは、どこの会社にも鮮明な派閥があった。社内の人的関係の多くが、団塊世代をもって途切れてしまった。これから日本を背負うべき30代から50代前半の世代は、いま疲れているように見える。
 学生時代に世の矛盾をついて大人に食ってかかった団塊世代は、社会の一員になって実際の矛盾と向きあったとき沈黙した。毎年あがる給料やボーナスを捨てるのは賢くないと判断したのだ。はじめは違和感を覚えた矛盾が、いつか身体に染みこみ、感覚は麻痺してしまった。矛盾を器用にのみこむのが、組織で栄達する前提条件だった。
 団塊世代の多くは転職に自信がない。団塊の世代は後進国に生まれ、中進国に育ち、先進国で仕事する。しかし、団塊世代は自信を失う必要はない。今まで通過してきた人生のなかでこの世代はすでにしっかりと武器を身につけている。これから始まるシニア時代を生きていくうえで、必要なものを十分に身につけている。問題は、本人がそのことをあまり自覚していないこと。自信喪失とともに、本来武器であるべき要素を不要あるいは邪魔なものと考えていることさえある。
 団塊世代気質の核に、枠と標準によって固定された協調と競争の調和精神がある。
 永遠の若者であり続けたい団塊の世代の多様な人生経験のなかで勝ちパターンを知り、挫折も味わって、精神の鍛錬も経験した。ハザマの時代を生きて試行錯誤から、柔軟性も身につけている。そんな団塊の世代は、きっと世の中に役立つ多様な仕事ができるはずだ。そうなんです。お互い、もっと自信をもって、今の変てこな社会を変えるためにがんばろうじゃありませんか。変人・小泉になんか負けてなんかおれませんよ。

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