弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年5月26日

スウェーデンに学ぶ「持続可能な社会」

著者:小澤徳太郎、出版社:朝日新聞社
 スウェーデンは「人間社会の健全性」と「エコシステムの健全性」のバランスがもっともよくとれていると評価され、「国家の持続可能性」1位にランクされた。日本は24位、アメリカは27位。
 スウェーデンの国土は日本の面積の1.2倍。人口は901万人なので、神奈川県や大阪府に相当する小さな国。
 スウェーデンの行動原理はきわめて常識的で、単純明快。あたりまえのことを、あたりまえのこととして実行する。たとえば、スウェーデン政府は、「地球は有限」を前提として、「経済は環境の一部」と見なしている。
 スウェーデンは、1813年のナポレオン戦争以来、戦争に参加していない。アメリカのイラク戦争にも軍隊を派遣していない。
 物流システムは、IT革命がいくら進もうとも、実体経済のなかで、必ず重要な地位を占める。消費者や事業所への配送ニーズは、これまで以上に高まるだろう。世界最高水準の燃費を誇る日本車や日本の省エネ型家電製品も、使用台数が増えれば、エネルギー総消費量は増える。
 インターネットを介してやりとりされる情報量の増大により、パソコンなどIT関連の機器の消費する電力量は10年間で8倍に増え、2010年には現在の日本の電力需要の3分の1にも達すると予測されている。
 スウェーデンは電磁波対策がもっともすすんでいる国。電磁波は光や電波の仲間で、レントゲン撮影につかわれるX線はがんを誘発したり、遺伝子を損傷する可能性がある。スウェーデンでの調査によって、電磁波は子どもの白血病とかかわりがあることが判明した。そこで、高圧の送電線を学校などの生活ゾーンから引き離したり、コンピューター画面から離れるように規制した。携帯電話からもれる電磁波も心配だが、通信状態を整備するために建てられるアンテナからの強い電磁波がさらに心配である。
 スウェーデンは景気回復と財政再建の二兎を追って、二兎を得た。日本はどちらも得ることができなかった。にもかかわらず、「経済大国日本」を自負する日本の政官は、アメリカ以外はお手本としないという、きわめて不遜な態度をとっている。
 スウェーデンでは、収入に応じて保険料を支払い、払った保険料の総額に応じて給付を受けとる単純明快な所得比例制度がとられている。低所得者のためには、税金でまかなわれる最低保障制度もある。ただし、スウェーデンの給付水準は現役の手取りの38%にすぎない。それでも、医療・介護・住宅といったサービス保障が充実しているから、老後は安心なので、現金支給は多くなくても安心してやっていける。
 スウェーデンの真似をしろというのでは決してありません。でも、スウェーデンに学ぶべきところが日本は大きいことを痛感させられました。

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