弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年3月10日

テクノストレス

著者:クレイグ・ブロード、出版社:新潮社
 テクノ依存症患者は仕事の効率を高めようとして、絶えず自分を駆り立てる。彼は自分の限界を認めようとしない。やがて疲労が精神をむしばみ、考え方が硬直しはじめる。自分ではそれと意識せぬうちに、能率は低下し、誤りを犯すことが多くなる。
 テクノ依存症患者は自分が踏み回し続けるハツカネズミになっていることに気が付かない。気がつくだけの洞察力をすでに彼らは失っている。
 制御と予知可能性を何よりも重視するテクノ依存患者は、抑えもきかず、どこでどうなるかも分からない欲望の力をもてあます。テクノ依存症の犠牲者は、自分の要求を感じとる力を失い、あるいは自分が要求を抱いているのかどうかさえ、分からなくなってしまう。
 他者に愛着を感じないテクノ依存患者は、いかなる人間関係を築くこともむずかしい。心の通いあった、長続きする関係をつくることは、とうてい不可能である。
 これはアメリカ人が書いた本です。いつのことか分かりますか。なんと、今から20年以上も前のアメリカ社会について書いた本なのです。ですから今は、もっとひどくなっていると考えるべきでしょう。
 一日中パソコンに向かってインターネットにはまっていたり、ゲームをしていたり、株取引をしていたら、そんな人が増えたら、この社会は人間が住むところではなくなってしまうでしょう。うるおいとゆとりのある人間社会にするためには、何が本当に必要なのか、今こそ考えるべきときではないでしょうか。

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