弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年2月24日

雇用破壊、非正社員という生き方

著者:鹿嶋 敬、出版社:岩波書店
 高校を卒業してすぐに就職し、同じ会社に正社員としてずっと勤務している人の生涯賃金(19歳から60歳までの年間収入の累計)は2億1500万円。高校卒業後、ずっとアルバイトを続けている人(パート労働者)は5200万円。生涯賃金の格差は4.2倍、1億6000万円の差がつく。
 フリーターが正社員になれないことによる経済的損失は、税収面では1.2兆円、消費額は8.8兆円、貯蓄額では3.5兆円になると推測されている。
 フリーターの7割はサービス業に従事している。そして、半数以上が従業員30人未満の小規模な企業・事業所に勤務している。
 フリーターの平均年収は、男性156万円、女性は122万円。フリーターの生活は気楽などころか、先を考えれば考えるほど、不安で押しつぶされそうになる。
 非正社員の親との同居率は高く、結婚している比率は低い。経済的に不安定なフリーターが増えれば増えるほど、非婚・晩婚というライフスタイルの選択に拍車をかけ、少子化はさらに進む。
 中高年フリーターが100万人時代となっている。若いうちからずっとフリーターで流されていく漂流組が100万人となり、近い将来には300万人をこすことになるだろう。
 25〜29歳の未婚男性フリーターの有配偶率は28.2%、男性フリーターの未婚は顕著だ。
 悲劇を増幅しやすい夫婦とは、夫はプライドがあって失業したことを言い出せない、妻は夫の失業を知ったとき、あなたがだらしないから、こんなことになると怒る、というケースだ。経済から疎外された男性のあせり、屈辱感は相当なものだ。
 正社員は多忙すぎ、非正社員は安すぎ。まさに言い得て妙です。うちの娘も朝7時すぎに家を出て、夜10時すぎに帰ってくる生活です。はたでみていても、本当に大変そうです。3月半ばに会社を辞めるというのを、とめる気にはなれません。

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