弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2006年2月27日

石器時代の経済学

著者:M・サーリンズ、出版社:法政大学出版局
 20年ほど前に出版された本です。図書から借りました。調査自体はもっと古く、今から40年前くらいになります。しかし、その意義は決して薄れていません。というのも、石器時代の人類の生活がどんなものであったか、その名残をとどめている民族を調査したものだからです。
 石器時代の人類は生きるために、耕作民や牧畜民よりも、はるかに激しく働かねばならないという考えは必ずしも正しくはない。このことが調査によって明らかにされた。
 カラハリ砂漠にすむブッシュマンは、食物と水はさておき、日用品については、ある種の物質的な潤沢さを享受している。必要に応じて加工品をつくりかえる材料は、たいてい身近に潤沢にあったので、恒久的な貯蔵手段を開発する必要もなければ、じゃまな剰余物や予備品をかかえこむ必要も欲求ももたなかった。明日を思いわずらって貯える必要がなかったので、物品の蓄積と社会的身分とのあいだにはなんの関連もなかった。
 大部分の狩猟民は、非生活資料部門では、ありあまる富ではないにしても、あふれる豊かさのなかで生きている。狩猟民は、何も持たないから、貧乏だと、我々は考えがちだ。しかし、むしろそのゆえに彼らは自由なものだと考えた方がよい。きわめて限られた物的所有物のおかげで、彼らは、日々の必需品にかんする心配からまったく免れており、生活を享受しているのである。
 すごい指摘ですよね。まったくそのとおりではないでしょうか。現代人は、あれもこれも必要だと思いこまされて、実際に使いもしないものを家じゅうに貯えておき、その支払いに汲々として、心のゆとりを喪っているように思います。
 狩猟民は、食物生産に一日あたり平均3時間から4時間しか費やしていない。狩猟民は、1日働いて、1日休むという間歇性を特色としている。1人あたりの労働量は、文化の進化につれて増大し、その反対に余暇量は減少した。
 ブッシュマンの若い人々は、結婚するまで、定期的な食物の調達を期待されていない。少女たちは15歳から20歳までに結婚し、少年はそれより5歳ほど遅れる。年とった親類たちが若者たちのために食物供給すべく働いているあいだ、健康で活発な十代の若者たちが遊び歩いているのは珍しいことではない。
 ニューギニアのカパウク族は、人生でのバランス感覚をもっているため、労働するのは一日おき。しばしば数日のあいだ激しく働く。仕事を完了すると、また数日ゆっくり休息する。なにごとにも、ほどほどを方針にしている。祭りや休養には、たっぷり時間をとってある。どうでしょう。未開の野蛮な社会だと私たちが思っていた社会は、人々が生き生きと、ゆったり暮らしていたのではないかというのです。
 アリやハチの最近の研究でも、すべてのアリ・ハチが忙しく働いているのではなく、のんびり、ごろごろしている働きアリ、ハチもたくさんいて、忙しく働いていたアリ・ハチがいなくなると、補充兵のようにして自分が欠員を埋め、忙しく働きはじめる。こんな話を聞いた覚えがあります。
 ところが、残念ながら、万物の霊長と自称する人間は、そのような調節ができていません。仕事がなくて困っている若者がいる一方、働きすぎて過労自殺、病気にかかる人があまりにも多い日本です。

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