弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年11月22日

放送中止事件50年

著者:メディア総合研究所、出版社:花伝社
 森繁久弥と佐藤栄作首相が対談した番組(1965年10月13日、TBS)で、森繁が「だいたい政治家になる連中は少し知能程度が低いのでは」と言ったところ、佐藤首相も「たしかに政治家というのは、どこか狂っていなくてはならない」と答えました。しかし、この部分は橋本官房長官によってカットされてしまいました。
 この佐藤首相が引退するときの記者会見(1972年)で、「テレビはどこだ。NHKはどこだ。新聞記者の諸君とは話さない。国民に直接話したいんだ。偏向的新聞は大きらいだ」と言って、内閣記者会が総退場して空っぽとなった記者席を前に、首相がひとりテレビカメラに向かってしゃべったという有名な事件がありました。いま、内閣記者会は小泉首相の手のひらで踊らされるだけで、抗議の総退場なんて考えられもしません。残念でなりません。
 NHKの花鳥風月を扱った番組にはいいものも多いが、肝心な政治・社会の問題には触れないし、迫らない。海外ものに力作があっても、日本政治の核心に迫る問題は巧みに避けている。海外ものでも、日米同盟にかかわる問題になると、とたんに及び腰になってしまう。本当にそうですよねー・・・。だから私はNHKの受信料の支払いを依然として停めています、だって、NHK幹部は、政府・自民党による番組の事前検閲は今後しませんと確約しないのですよ。何が公正・中立・不偏・不党ですか、聞いて呆れます。
 政府と向きあうことをしなくなったというだけでなく、テレビは社会とも対面しなくなっている。憲法改正問題にしても、憲法のどこがどう問題なのか、問題でないのかについて、真正面からとりあげた番組がどれだけあるのか・・・。まったく同感です。日曜朝の、モノ好きな人しか見ていない時間帯での政治討論会だけでお茶を濁されては困ります。ゴールデンタイムに、とことん議論する番組を組むべきなのです。
 私は高校生のとき、紅白歌合戦なんて、あんなものは日本人を一億総白痴化するだけの番組でしかないという誰かの評論を新聞で読み、まったく同感だと思って以来、紅白歌合戦を見なくなりました。大晦日の夜にはほかにもやることがあると思いませんか・・・。
 同じく、高校生のときに朝の連続テレビ小説「おはなはん」をくいいるように見ていました。でも、弁護士になって何年目かのとき、テレビなんか見るのは人生のムダだと思うようになり、見るのをやめてしまいました。テレビを見ないと、頭で毎日すっきりした生活を過ごせます。困るのはたったひとつ、災害情報をすぐに知れないことです。でも、それは田舎に住んでいますので、どうせたいしたことありません。
 ライブドアの買収にあって、フジ・ニッポン放送グループは、放送には「高い公共性」が求められるとくり返し強調した。そのとおりだ。しかし、「面白くなければテレビじゃない」と言ってきたのはフジ・ニッポン放送だったことを忘れてはならない。そのとおりです。頭を空っぽにしてしまうバカバカしい面白さ。視聴率を上げて、いかに広告料を高くとるか。それしかテレビ局の首脳は考えていないのではありませんか・・・。
 かつて「若者たち」やベトナム反戦運動をとりあげた番組は「作品が重すぎる。暗すぎる」という理由で中止に追いこまれた。しかし、現実には重いし、暗いことが多い。お笑いショーばかりを国民が求めているわけではない。本当に、そのとおりです。
 わずか80頁足らずの薄っぺらな冊子ですが、ずっしり重い内容で、両手でもっても支えきれない思いがしたほどです。
 メディア内部の反発力が衰退している、圧力に対する社会的な反発力が乏しくなっている。このように指摘されています。日本をあきらめない。どこかの政党が総選挙のときにスローガンに使っていた言葉ですが、いまの私たちの合言葉にすべきではないかと真剣に思います。いかがでしょうか・・・。

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