弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年11月11日

小泉純一郎、血脈の王朝

著者:佐野眞一、出版社:文芸春秋
 今の有権者は、スポーツ紙で政治を知り、ワイドショーでそれを確認している。
 この本に、このように書かれています。本当にそのとおりだと思います。そうでなければ、小泉・自民党が「大勝」できたはずはありません。この言葉は、小泉首相の秘書をつとめる飯島勲が記者にもらしたものです。このように、小泉首相はメディアにどう映るかを徹底して研究し、計算しているのです。
 小泉人気とは、突き放した見方をすれば、国民とメディアが総結託した構図のなかに、真紀子人気を光景として浮かびあがった蜃気楼にも似た現象だ。
 国民とメディアが結託したとは、私にはとても思えません。メディアの手のひらの上で国民は踊らされているだけでしょう。また、蜃気楼は間違いありませんが、意外なことに、残念なことに、かなり長続きするものではあります。
 小泉首相には心を開いて話せる盟友やブレーンは1人もいない。異常なほどの孤独癖がある。しかし、実姉の信子にだけは、どんな細かいことでも話をしているようだ。ところが、この信子は独身のまま小泉の世話をしてきたものの、マスコミとはまったく没交渉で、写真も今から40年前のものが1枚公表されているだけ。うーむ、なんという政界奥の院なのでしょう。今どき写真をとるなんて、マスコミがその気になったら、いとも簡単なことだと思うのですが・・・。
 小泉は周囲にほとんど誰も寄せつけず、肉親の信子を唯一心の拠り所として、その政権を長期化しようとしている。それほど一国の首相に近い存在でありながら、写真もないなんて、マスコミはだらしなさすぎます。
 小泉の祖父である小泉又次郎は普選運動の闘士として庶民の人気が高かった。逓信大臣を2度もつとめている。この又次郎は、鳶(とび)出身で、背中から二の腕、足首まで入れ墨を入れていた。なるほど、そんな人物がいたのですか・・・。
 小泉政権は、支持率、アメリカ、マスコミ、財務省の4つの要素で支えられている。唯一の支持基盤が国民的人気にあることが自分でも分かっているから、テレビカメラがまわっているときと、回っていないときとでは、別人のように小泉の態度が変わる。
 スイッチが入ってアドレナリンが出ているときは、すごくテンションが高い。ところが、アドレナリンが出ていないときは、声も聞きとれないくらい小さく、話もまったくつまらない。テレビカメラがまわっていないと、ものすごくお座なりな対応になる。その落差は日増しにひどくなっている。
 ふーん、なんとなく分かる対応です。それくらいの軽い男なんですね。こんな薄皮まんじゅうのようなペラペラ男に日本国民がいつまでも黙ってついていくとは思えませんし、思いたくないのですが・・・。
 この本には、田中真紀子がいかに人間としてつまらない、わがまま勝手をしてきたか、その実像が描かれています。でも、つい最近、新聞に、小泉首相を鋭く批判するコメントを寄せていました。若者はテレビなんか見るばかりで考えが足りなくなっている。もっと新聞や本を読んで自分の頭で考えようという訴えものっていました。その点はまったく同感です。田中真紀子の人間像には共感できませんが、たまにはいいこと言うと、つい手を叩いてしまいました。

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