弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年8月29日

ワインの女王、ボルドー

著者:山本 博、出版社:早川書房
 この夏、ボルドー地方に行き、サンテミリオンで3泊してきました。広々としたぶどう畑の真っ直中にある別館に泊まり、ゆったりとした日々を過ごすことができました。日本に帰ってきて一番に読んだのがこの本です。
 今回、私がボルドー地区を選んだのは、ブルゴーニュ地方へは18年前に行ったことがあるからです。それほどワインの味がわかるわけでは決してありませんが、赤ワインの色の良さ、舌になじむ味わいには魅せられます(私は日本酒と同じく、白ワインは飲みません。以前はどちらも飲んでいましたが、今は卒業した気分です)。
 したがって、この本も私の行ったサンテミリオン地区だけを取りあげて紹介するのをお許しください。著者は大先輩の弁護士ですが、本格的なワイン専門家です。
 ボルドー・ワインを少し飲みこんだ人なら、サンテミリオンと聞けば、なんとなく人なつっこくて、いやみやはったりがなく、いつも安心できる赤ワインを連想するだろう。事実、サンテミリオンのワインは安心して手を出せる気安い仲間なのだ。メドックのシャトー・ワインが格式高く品のいい山の手の令嬢だとすれば、サンテミリオンのワインは下町娘の気だての良さが現われたようなワインである。
 そうなんだー・・・。気安く安心して飲めるワインの里に出かけたのか・・・。道理で下町風の街並みだったな、そう私は思いました。
 サンテミリオンへ行く道が分からず、ボルドー駅からタクシーで行きました。小一時間かかりました(70ユーロ)。ところが、実は、TGVにはギルドーの手前にリブルヌという駅があり、そこからはタクシーでも10分で着くのでした(20ユーロ)。サンテミリオン駅もあるけれど、なにしろ本数が少ないのです。
 サンテミリオンはドルドーニュ河の右岸に迫る小高い丘と、それに続く高台および後背部のゆるやかな起伏をもった丘陵地帯なのである。畑も傾斜地のものが少なくない。
 サンテミリオンの中心部は、こぢんまりとしていて、5分も歩くと町はずれに出てしまうようなところ。ヨーロッパの古い中世の街が、時間の流れを止めたようにたたずんでいる。びっしりと建てこんだ古い家並みの狭い石畳の急坂を登ると丘の上の中心に古い寺院がある。寺の裏へ回ると、古くてぽつんと立った鐘楼の塔があり、そのまわりが石畳のテラスになっている。ここからのぞくと、目の下に赤瓦の屋根がかたまっているが、瓦は苔むしているし、建物の壁も古くさい。その先には、あちらこちらに段々畑のぶどう畑とはるか先の遠景の山々が望める。
 ここは中世のヨーロッパ中で巡礼が流行った時代、大切な宿場町だった。鐘楼のテラスのところにレストラン・プレザンスがある。
 行った人でないと描けない街並みの描写です。まったくそのとおりの情緒あふれた小じんまりとした古い町です。ともかく、周囲に延々と広がるぶどう畑には圧倒されてしまいます。遊園地型のバスに乗って、街の周囲を35分で巡ってみました。両側は、ずっとぶどう畑です。それも中心地に近いほど高級ワインを製造しているというのですから不思議なものです。ぶどう畑にはたくさんの小鳥がいて、たまにウサギも見かけました。
 なぜ、ここがワイン産地として有名かというと、やはり土壌のようです。丘は畑の基層が固い石灰岩の岩盤になっています。道に落ちている白い石は白墨です。子どものころ、路面によく絵を描いたのとまるで同じです。
 基層の下には暑い砂利層となっている。氷河時代に中央山岳地帯から運ばれてきた石がこのあたりに砂利になって残ったという。
 サンテミリオンのぶどうは、メルローが中心。カベルネ・ソーヴィニョンも少し混ぜてはある。だから、メドックに比べてサンテミリオンを飲んだらいい。
 うーん、なるほど、そうなのかー・・・。そう思いました。レストラン・プレザンスでは3種の赤ワインを少しずつ飲ませてくれました(デキュスタシオン)。そのときには、サンテミリオンの隣り町のポムロールのワインが一番のみやすい気がしましたが・・・。
 町なかのワイン販売所でカーブ入場無料という看板につられて入ってみました。地下の洞窟にワインが樽と瓶と両方びっしり寝かせてありました。すごいものです。堅い岩盤を何年かかって、どうやって掘ったのでしょうか・・・。
 ツーリスト・ビューロー(素敵で親切な日本人女性が働いていました)で、シャトーワイン見学ツァーに申し込みました。フォンロックというワイン・メーカーです。ちょっと渋みの強いワインでした。空きっ腹ではワインはとても飲めません。
 パリのシャルル・ドゴール空港でトロットヴィエーユのワインを見つけて買いました。黒ラベルに金色の枠と文字が輝くデザインです。口当たりのいい、こくのあるワインでした。
 3日間、ぶどう畑のなかをさまよい歩きました。快晴でしたので、真っ黒に日焼けしました。あわてて野球帽を買ってかぶりました。爽やかな風に吹かれて、とても心地よいひとときでした。うーん、良かった・・・。
 サンテミリオンの写真をたくさんとってきました。ここでお見せできないのが残念です。どなたかトラックバックで一面のぶどう畑が広がる風景をのせていただければ・・・。

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