弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年8月 1日

日本退屈日記

著者:サイモン・メイ、麗澤大学出版会
 日本が放棄しなければならないのは、生活のほとんどすべての面にわたる無責任な官僚たちによる秘密主義、もみ消し、統制が占めている比重の大きさである。
 日本の最悪の暗黒面は、秘密主義や嘘をつくことや道徳的責任の回避に対して、極端なまでに寛容なことだ。
 うーん、なるほど、そうかもしれませんね。政府の嘘に対して国民が怒りを示さないからこそ、今も小泉首相がノウノウと政権に居坐り続けているのです。
 日本には三悪がある。和という名の合意や秘密主義、生活のほとんど全局面に及ぶバカげた官僚主義化。これが腐敗、非能率、不誠実、自然環境の破壊、無用な公共事業、お粗末な建築物、不十分な高等教育などを助長させてきた。だが、国民たちの計り知れない弾力性、忍耐、技能、精密さへの愛好心、健全な判断力、そして最後に現実主義と適応力とのおかげで、今よりも強い新日本が出現するだろう。
 日本人は、ひとつの仮想現実をもっとも手際よく製造する業種、すなわち平和産業を創出した。平和産業は過去を想い出すどころか、過去を決して想い出させなくすることに専念している。記憶というより催眠効果だ。
 なるほど、鋭い指摘ですね。小泉首相をはじめとする歴代の日本首相が8月6日の広島の祈念式典に参列しても、平和が遠ざかる一方だという理由がよく分かります。
 忘れるという粗暴な技術を会得した国ありとすれば、それは日本だ。自己検閲こそは日本の特技だ。日本という国は、独裁者のいない独裁政治国家に似ている。
 野心を抱く民衆扇動型の政治家たちは、軍隊のタブーを屈辱とみなし、解放者ぶりもよろしく、嬉々としてタブーを廃棄せよと叫んでいる。いま、自民党と民主党の若い40歳代以下の政治家たちに好戦的な連中が多いというのは、本当に困ったことです。
 ロンドン大学の哲学教授が1年間、東大で哲学を教えました。寿司をこよなく愛するイギリス人ですが、決して象牙の塔に閉じこもっている人ではありません。ベンチャー企業の経営にも関与しているのです。そんな哲学教授が、東大の官僚主義に閉口した話などが具体的に語られ、日本という国を再認識させられます。
 最後に、京都の俵屋旅館に泊まって最高級の懐石料理に舌鼓をうつ場面が登場します。私も、一度は行って味わってみたいと思っています。どなたか行かれましたか・・・。

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