弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年7月29日

ニコライ・ラッセル

著者:和田春樹、出版社:中央公論社
 帝政ロシアのナロードニキ時代を生きた人物が、日露戦争で捕虜となったロシア兵を革命側に工作するため日本にやってきて、それなりの成果をあげていたというのです。まったく知りませんでした。その人物が本書の主人公、ニコライ・ラッセルです。
 ヴ・ナロード(人民の中へ)と叫んでいたナロードニキ運動は、学生時代にセツルメント活動に3年あまり没頭していた私にとっては、なんとなく親近感を覚えるものです。でも、ロシア皇帝(ツァーリ)暗殺などの結果、ナロードニキ運動は壊滅させられます。ラッセルはアメリカに亡命し、ハワイで上院議員にまでなります。そこへ、再びロシアから亡命者がやってきて、ラッセルは祖国ロシアの変革を志すのです。たちまち、日露戦争で7万人もいたロシア兵の捕虜への工作を始めます。
 ロシア兵捕虜へ日本が人道的な扱いをしたことは定評があります。第二次大戦のときとは、まるで違うのです。九州にも、福岡と久留米そして熊本に各2000人以上ずつ捕虜収容所がありました。
 世の中に知らないことの多いことを改めて思い知らされました。

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