弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年7月29日

清帝国とチベット問題

著者:平野 聡、出版社:名古屋大学出版会
 儒教も漢字も共有していないモンゴルやチベットなどが、なぜ漢民族を中心とする中華民俗の不可分の一体となりえているのか。この疑問を清時代にさかのぼって解明しようとした本です。よく分からないところが多かったのですが、清王朝について少し理解することができました。
 清王朝はもとは女真族ですが、その信仰する文殊菩薩のマンジュシュリーにちなんだマンジュ(満洲)も改称したのです。初めて知りました。
 賢帝として名高い乾隆帝は、漢の人を満洲族が抑圧した歴史を抹殺しようとして「文字の獄」という禁書(書物を焼却した)をしたということも知りました。
 雍正帝は、モンゴルの活仏が北京に来たとき、自分より上座にすわらせ、敬意を表しました。
 李氏朝鮮は北方の野蛮人「オランケ」にすぎない清帝国への服従を拒絶しようとしました。それでも力にはかないません。そこで、朝鮮は表向きは清帝国に服従しながらも、内面では、女真=胡=オランケが支配する中国は真の中華ではありえず、今や中華の精髄は儒学を高度に発展させた我が国(朝鮮)に承継されている。したがって、我が朝鮮こそ中華である。このような「小中華」思想をうみ出しました。
 少しだけ歴史が分かったような気がしました。

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