弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年4月 1日

味ことばの世界

著者:瀬戸賢一、出版社:海鳴社
 デザートをいただくとき、それは別腹よ、なんて言葉があります。この本によると、それは実在するというのです。甘いものは身体にプラスになる。このプラス信号を口にすると、たとえ既にお腹がいっぱいのときであっても、たちまち胃袋は中身を押し下げてデザートの入るだけのスペースを空けるのです。えーっ、本当なの・・・。でも、真実のようです。
 味は舌で感じる。だが、おいしさは脳で感じる。ある食べ物を口にしたとき、右脳と左脳は同時に活動しはじめる。まず、右脳でおいしいかまずいのか判断をし、左脳の言語中枢を介しておいしいとかまずいと言葉で表現する。左脳の分析は複雑系になればなるほど分析結果に時間がかかり、その表現も難しくなる。おいしいかどうかは右脳ですぐ判断できるが、どこがどう違うのかを分析し、言語的に表現するのは左脳が担当し、それには時間がかかり、表現にも大きな個人差がある。
 味やおいしさを言い表すのは知的なゲーム。その人の人間としての経験の豊富さ、知的才能とその鍛錬・品格など、すべてにかかわる。おいしさを上手に伝えることのできる人は深みのある人である。
 味覚の情報は半分しか新皮質に入らない。だから、料理番組では「おいしい」としかレポーターは言えない。意識にのぼってくる部分しか表現できないから。視覚はすべて新皮質に入るから言葉にしやすいのに比べて、臭覚や味覚が言葉にしにくいのには根拠がある。なるほど、そうだったのか・・・。
 だから、私は、単においしかったとか、うん、うまい、などという言葉ではなく、どういう味だったのか、その場の雰囲気をふくめて、情景描写で美味しさを言葉にしようと努めています。なにしろ深みのある人間になりたいものですから・・・。

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