弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年4月 1日

ネパールに生きる

著者:八木澤高明、出版社:新泉社
 ネパールに行ってみたいと思ったことは何度もあるが、残念ながら行ったことはない。ヒマラヤのふもとの美しい大自然に囲まれた、のどかな暮らし。というより、最近では、まだ毛沢東主義者(マオイスト)がいて政府軍と殺しあっている。そんな物騒な国だというイメージの方が先に立ってしまう。
 著者は、まさにそのマオイストの軍隊に入りこんで取材し、写真つきで紹介している。表紙で微笑えんでいる女性兵士は戦闘中に死亡し、すでにこの世にはいない。のどかな山並みを背景とした写真なのに・・・。しかし、そこは厳しい戦闘地域だったのだ。
 マオイストは1万5千人もの兵力を擁しているという。女性兵士も少なくない。ネパールでは、2001年6月1日に、当時のビレンドラ国王夫婦が、ティペンドラ皇太子に殺害され、本人も自殺するという惨事が起きた。そのあとを前国王の弟であるギャネンドラ現国王が継いだ。そして、つい先日、国王親政を強引に始めた。
 ビレンドラ前国王は親中国派で、マオイスト対策に軍隊をつかうことに反対し、話し合いによる平和解決を望んでいた。ギャネンドラ現国王は、親インド派でマオイストの増長を警戒し、軍隊の出動を強く望んでいた。なるほど、そうだったのか・・・。
 マオイストの兵士は14歳から20歳が中心で、戦闘の前に酒や麻薬で無感覚になり、死を恐れずに突進する。村人は貧しいから、兵士になるしかない。それがマオイストの兵士であってもかまわないのだ。マオイストは酒と賭博を禁止している。集会に何万人も集めるだけの力がある。ところが、村人が途中で集会を抜け出そうとすると、若い女性が棒で叩いて坐らせてしまう。
 ネパール人女性と結婚した日本人カメラマンである。この本にある写真はネパールの実相を伝えてくれる貴重なものだ。

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