弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年3月31日

仁義なき英国タブロイド伝説

著者:山本 浩、出版社:新潮新書
 紳士の国というイメージが完全にふっとんでしまう本です。ええっー、そんなにイギリスって、他人のゴシップが好きだったのか・・・。そんな思いにかられました。
 私は週刊誌はほとんど読みません。でも、新聞の下の方にのる週刊誌の広告は必ずチェックしています。今どんなことが政界や芸能界で話題になっているのか、新聞を読んでいるだけでは絶対にうかがい知れない世界がそこにあります。
 イギリスのタブロイド新聞は、どこも旗幟鮮明です。右派のサンは310万部、左派のディリー・ミラーは210万部・・・。
 バッキンガム宮殿の召使いにまんまと化けたディリー・ミラーの記者がいました。日本の皇居に夕刊紙の記者が潜入することは不可能な気がしますが、かりに可能だったとしても、それが記事になることは絶対にありえないことだろうと思います。ダイアナ妃の死をめぐるパパラッチ騒動も紹介されています。その謎はいまも解明されていないようです。
 札束ジャーナリズムという言葉があるそうです。タブロイドに限らず、イギリスではネタを独占するために情報提供者に高額の報酬を払うのです。取材謝礼というより、情報を独占する権利についての売買だという発想なのです。
 きわめつけは、タブロイド記者からブレア首相のスポークスマンにのぼりつめて首相府情報・戦略局長までつとめた人物(アレスター・キャンベル)を紹介しているところです。日本では、週刊誌の記者が首相のスポークスマンになるなんて、とても考えられません。
 仁義なきタブロイド新聞の激しい競争ですが、日本のサンケイやヨミウリのような自民党べったりの新聞を読んでいない者からすると、朝日も毎日も西日本も日経も、いつだって同じような論調なので、いかにも物足りなさを感じています。まあ、どっちの方がいいか、評価の分かれるところなんでしょうが・・・。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー