弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年2月23日

伊藤博文と韓国併合

著者:海野福寿、出版社:青木書店
 この本で面白く、目新しいところは、死せる伊藤博文を登場させて同時代の人々と対話させているところです。100年後のダイアローグと銘うっています。それが、なるほど今生きているのなら伊藤博文が本当に言いそうなセリフになっていて、感心します。凶弾に倒れた伊藤博文も、若いころは実はテロリストでした。イギリス公使館の焼き打ちに加わり、塙保己一の息子を斬殺もしています。
 この本を読んで驚いたのは、伊藤博文を殺したのは安重根だとばかり思っていましたが、ケネディ暗殺事件と同様に、真の暗殺犯人は別にいるという話があるということです。同行していた貴族院議員(室田義文)は、駅の2階の食堂からカービン銃(フランス製の騎兵銃)で3発の弾丸が上から下へ伊藤の身体にあたった。安重根が下の方から狙って撃った弾丸ではない、と一貫して主張していたというのです。
 では、真犯人は誰なのか。それは、伊藤を邪魔ものと考えていた日本政府内の反対派、対韓侵略積極派の明石元二郎少将ないし後藤新平あたりだ。そんな説があるというのです。うーん、そうだったのか・・・。伊藤博文の遺体から摘出されたはずの弾丸が裁判の証拠になっていないというのは、たしかに不可解です。伊藤博文は韓国併合に反対ではありませんでしたが、国際協調も大切にすべきだと考えていました。そこを不満だと考えた反対派がいたわけです。
 朝鮮人はえらい。この国の歴史を見てもその進歩は日本よりはるか上にあった時代がある。才能においてお互いに劣ることはない。人民が悪いのではなく、政治が悪かった。
 国さえ治まれば、人民は質量ともに不足はない。韓国と合併すべきだという議論があるが、合併の必要はない。
 伊藤博文暗殺の背景について、もっと知りたくなりました。

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