弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年1月12日

ニート

著者:玄田有史、出版社:幻冬舎
 ニートとは、働くことも学ぶことにも踏み出せない人のこと。2000年に17万人、2003年には40万人いると推定されている。私のまわりにも、いる、いる・・・。
NOT.in.Education、Emloyment、or Training
ニートはフリーターではないし、単なる失業者とも違う。仕事によって自分の未来を切り開いていくことに希望を持てない若者たちのことだ。25歳未満に限っても今の日本には40万人もいる。ということは、実は、もっともっと何十万人もいるということ・・・。どうして、日本人はそうなってしまったのか?
 16歳のときニートであった人々の4割以上は、18歳でもニートであり、21歳以上になったときも、教育や訓練を受ける機会は絶望的に少ない。ニートにあるのは、将来見通しについての限りない希望のなさと、状況を転換することの困難さだ。中卒後に進学しなかった10万人、高校を中途で退学した10万人、あわせて20万人の若者は、その後どうしているのか・・・。
 彼らに立ちはだかる壁は、人間関係にある。現場でうまくやっていけそうもないという、働く自分に対する自信の欠如だ。ニートには困ったことを相談する相手がいない。
 ひきこもりを抱える世帯が日本全国に41万世帯はいると推定されている。
 この本は、ニートについて実情を知らせてくれると同時に、中学生に対して実社会での労働経験に取り組んでいる兵庫県と富山県の中学校の様子を知らせているのが貴重なレポートになっている。わずか5日間だけど、現場で中学生が働くことによって大きなものをつかむ中学生が多いという。私の法律事務所にも2度ほど中学生が訪問してきた。もちろん、私は大歓迎した。でも半日では少なすぎると思った。5日間なら、まだましだ。福岡でも、ぜひ試みてほしいものだ。私は協力するつもりだ。
 次のような、いい言葉に出会った。ぜひ紹介したい。
 働くことのささやかな喜びとは、回転寿司のようなものだ。目の前に流れるネタは、必ずしも自分が一番食べたいものではないかもしれない。それでも、ときどき、「おっ!」という皿はまわってくる。ありつくには、まず席に坐っていなければならない。自分の前にまわってきたら、自分で手を伸ばさないといけないのだ・・・。

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